食堂遭遇

その日は各自行事を調べるようにとのことで解散した。もちろん、調べてはいない。
思い出せばいいだけだ。最も外へ出なかった俺がまともに覚えているかは謎だけど。

少しだけ仮眠をして、おきれば、もうすぐ食堂も閉まりそうな時間だった。
慌てて、食堂へ行けば、そこには見慣れた俺の幼馴染とそれに似た人が二人で蕎麦とうどんをすすっていた。


「冷慈」

「お、宋壬、お前も飯?」

「珍しいね……作らなかったんだ?」

「あー……こいつと部活してたらあっちゅーまにこんな時間だったからな……な、尊」

「お、おう……」


食べたいものをもらってから、その二人の前に座って俺も食べだす。
あぁご飯おいしい。


「……あ、草薙」


冷慈がちょっと驚いたようにその名を呼んだ。
振り向けば何かを聞きたそうに草薙さんが立っていて。
お腹すいたのかな。真面目な人だから今まできっと調べてたんだろうな。


「あ、こんばんは……。宋壬さんも、ご飯ですか?」

「うん」


どうしたんだろう。誰かを探すような動きをしてる


「……尊さん」

「黙れ」


冷慈とは普通に話してるように見えたその人は草薙さんに敵意むき出しだった。
わー、冷慈みたいだ。とゆったり考えていると冷慈と目があって耳打ちをされた


「お前、今、俺みたいって思いやがったな」

「……なんでわかったの……だってそっくり……」

「……それ、言っちゃ駄目なやつだ宋壬」


どうやら言ってはいけなかったようだ。
人間って難しい。


「月人さんのことで伺いたいことがあります」

「あにぃ……いや、兄貴のことで?てめぇに教える義務はねぇ!!あっち行きやがれ」

「そういうわけにはいきません。少し気になるので、教えてください」


あぁ、月人さんの話だったのか。なるほど。
そして冷慈に似てる人は尊さんっていって、どうやら月人さんの弟のようだ。
今更認識した。


「月人さんは今日はもう食事を終えて帰られたんですか?」

「帰る……?どっから、どこに?」

「食堂から、部屋です」

「兄貴はこんな場所こねぇよ」

「……え?」

「今ごろ、月を眺めてると思うぜ。兄貴は月の神だからな。なんかミステリアスでかっけーよな!この箱庭じゃ意味ねぇけど、兄貴は仕事に真面目だったからな。習慣になっちまってるんだろ」

「神様の習慣……」


うん、やっぱり、冷慈に似てるなぁ。と尊さんをじっと見つめる。
こう……他人のために動くところも不器用なところも、髪型も。
なんてことだ。冷慈だけでいいのに。暑苦しそうだ。


「……月人さんは、人間に興味がないんでしょうか?」

「おれも嫌いだね、人間なんて。冷慈さんは別としても。てめぇの用事はそれだけか?おれは飯食うぞ」

「はい……。あ、冷慈さんは、今、お暇でしょうか……」

「ん?俺か……ちょい待ち。暇。何?」


(あ、何か、いい感じ、じゃないな)


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