仮、参加



結局断わる暇もなく生徒会長であるアポロンさんに引っ張られて来てしまった生徒会室には先に着ていた月人さんが、待っていた。


「宋壬さん、生徒会の広報なんかやってみませんか?」

「広報……?」

「はい、イベントや行事を行う際にポスターなどを描く人のことです」


あぁ、それなら確かに美術部としても、できるなぁとボンヤリ思いながらも、やっぱり俺が生徒会なんてとんでもないような気がする。
ましてや、俺は別に卒業なんかしてもしなくてもいいんだ
綺麗なこの世界にいれて、この世界が不老なら、俺にはもってこいの世界。


「……絵なら、他の人でも描けるよ……」

「宋壬さんがいいんです」

「……じゃあ、仮、で」


結局、俺も断われなかった。
冷慈のお人よしが移ったのかもしれない。あとで返してこよう。


「やった!やったね!ツキツキ!!トシトシが一緒にしてくれるそうだよ!」

「トシトシ……」


アポロンさんが言っているトシトシっていうのはきっと、歳徳神からきているんだろう。
歳月と、お正月の神様。
本当に日本は色んな神様がいる。


「そうですか」

「戸塚さんは、よく日白義くんといるよね?仲がいいの?」

「さぁ。どうでしょう」


俺も、そこはイマイチわからないのであえて触れないでおく。
話しやすいだけで、仲がいいかはわからないのだ


それから話し合いが始まって、テーマ?はせっかく秋に季節が変わったから、記念に秋にちなんだ行事をしようというものだった


「月人さん、宋壬さん。秋にやりたい行事は何かありますか?個人的な趣味でも構わないので、よければ意見を教えてください」


いきなり話題を振られてしまった。青信号に安心していたらいきなりはねられた気分だ。


「趣味はありません」

「……食べて、寝る」


どっちの返事も行事に繋がるようなものではなかった。
でも、俺は日ごろその二つを主に繰り返しているだけだからそのまま答えただけだ


「…………………………」


特に考えていることもなく、草薙さんの困り果てた顔を見た。
でも何も思いつかない。考えようとも思っていない、のが正解だけど
そんな俺とはやっぱり違って、何かを思いついたのか月人さんは口を開いた


「……興味の有無は関係ありませんが、学園の枠に限らず、人間社会に存在する秋の行事をやってはいかがでしょうか。俺たちは学園に所属していますが、人間の学生とは異なり、学ぶべき対象は人間ですので」

「すごくいい案ですね!」

「しかし人間の社会に存在する行事も調べるとなると時間が必要です」

「これまで、すぐに行事を決定していましたが、様々な知識に触れながらゆっくり決めてもいいと思います」


とんとん拍子で話が進んでいくのを、俺は、遠巻きから聞いて、いた。
まぁ、でも思っていることなんて……


(お腹空いたなぁ、眠いなぁ)

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