夢は理想

夢を見ていた。いつまでもふわふわとただ真っ白な色のない世界をさまようだけの。
そこに出てきた色は明るい水色で、俺の半分を塗りつくした。

残りの半分はまだ、なんでもないただの俺で。


「あれ?……俺はあの子がいないと、何もないの?」


あの明るい水色は俺に足りないものを足して、俺が持ちすぎたものを持って逃げた。
キザったらしい大泥棒。
本人にそのつもりは微塵もなさそうだ。


「宋壬。俺じゃきっと、お前の何かを変えてやれない」



聞えたその声は儚げに消えた。
そうだね。君には、何もできない。だって、君はもう、たくさんのことを俺にしてくれた。

今度は、誰が、俺の残り半分を埋めるのだろう。
空っぽの俺に一体何を入れるのだろう



「……少し、楽しみ、だな」


真っ白から少しづつ色味を帯びていく世界。




「……。……宋壬」

「……あ、おはよう、ございます」


名前を呼ばれ、目を開けたらいつの間にか教室の自席で、俺はまた寝ていたようだ。
もう辺りは毎度おなじみの夕焼けに染まっている。今日も自然は綺麗だな


「君は帰らないのですか」

「……あ、もう帰ります。起こしてくれて、ありがとうございます月人さん」

「いえ」


また起こしてくれたのは月人さんで、微笑んだりもせずに彼は教室を後にした
生徒会がどうとか言ってた気がするな。と思いながら寮まで、俺も歩き出す。

そういえば、お腹が空いたな。早く食堂に行こう。
ご飯を食べたら寮に戻ってシャワーでも浴びて、また外に行こう。

今夜も月は眩しいんだろうか。
俺では手が届かないほどに。


(月人さんなら届くんだろうな。当たり前か。月の神様だし)


あの人の儚さは、俺とは全く違う。濁りのない綺麗なもの。
どうか、そのまま、貴方は綺麗なままでいて。


(別に欲する人がドブ鼠のように汚いと思っているわけではないけれど、彼等は欲したが故にたくさんのものや人を犠牲にする、犯罪者だ)


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