ノロマと呼ばれる



次の日、寝坊をして学校へ行くと草薙さんに心配された。
別に体調が悪いとかではなくて、ただ今日の夜寝る時間がいつもよりも遅かった、ただそれだけなんだけど。


「……大丈夫、だよ。昨日、部活?を夜遅くまでしてただけで……」


一応、あれも部活動のうちだろうと思い、そう伝えると驚いたような表情のあとに彼女は優しげに笑った


「そうだったんですね!嬉しいですけど、なるべく遅刻はしない程度で、お願いします」

「……うーん、がんばるね」


彼女は見ていて、俺も柔らかい気持ちになる。
あったくて眩しすぎない、優しい子。


「おい、草薙。そいつを連れて廊下へ出ろ」


いつの間にか教壇にはトト先生がいて、俺と草薙さんを呼び出した。
遅刻したことを怒られるんだろうか。だとしたら申し訳ないなぁ。


「貴様、私の授業に遅刻するとは、いい度胸だな」

「……あー……ごめんなさい」

「全く、言葉だけのようだな。ノロマ」

(……あぁ、俺のことか)


どうやら俺はトト先生から"ノロマ"の称号をいただいたようだ。
冷慈は奇人だったし、彩詞はクズだし、哀詞は短気だったけど俺はノロマなのか。
まぁ、それが揺るがない事実なのだが


「……貴様は、なんのためにこの箱庭に呼ばれたか、理解しているのか」

「いいえ、俺は寝てたので知りません」

「えぇ!?」


そういえば、なんのために、俺がここへ呼ばれたのかまでは聞き損っていた。
丁度いいな〜と思いながら教えてと意味をこめて驚いてる二人を見る
トト先生は盛大に溜息をつくし、草薙さんはどういえばいいのか、と迷っているようだった


「貴様、よく聞いておけ。これ以上は言わんぞ。お前が呼ばれた理由は、"歳徳神"となるべく、神を学ぶことだ。それと平行して、人間への理解と愛を知る、それが貴様に課せられた……」

「ま、待ってください!宋壬さんは人間、ですよね?なのにどうして、人間への理解を……」


草薙さんの抗議を聞いて俺自身もピンときていなかったので、とりあえずわからないというように首を傾げておく

実際問題、わかってない、けれど。


「……ノロマは、己が人間であることを良しと思っていない。人間のような欲に塗れたものを否定している。それ故に、人間についても、理解をするようにゼウスは言っているのだ」

「あぁ、なるほど……神様って凄いんですね。どうして、俺の考えてることがわかるんだろう」


月人さんだったりゼウスさんやトト先生だったり、神様は尊敬しなければならない凄い人がたくさんだ。
俺たち、人間とは違う、雲の上の存在。

今、その人たちに会えていることは凄いことな気がしてきた。


「貴様、神を侮辱しているのか。それぐらい、容易いことだ」

「……侮辱はしてません。凄いなって思います。それに、神様はきれいなままだ」


人間の儚い命なんてすぐに散ってしまう。
そう、簡単に命の灯火は消える。
100年なんてあっという間なのだ。俺も気づけばおじいちゃんになってしまう。


(そんな、ヨボヨボになってまで、醜い死に際を晒しても何の価値もない)

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