ここは○○の世界



「せんせー?せんせーで合ってるー?」

『あれぇ?だれぇ?可愛い子発見したよー!』

『ヒャッヒャッヒャ!カマのくせに逆ナンパされてんのかー!』


どうやらこの世界の柊とグルーガンは非常に陽気なようでワインを片手にニコニコと違和感のある口調で喋っている
今の会話からわかったことといえば、どうやらヒイラギと呼ばれた人物は、オカマ扱いをされているらしい


『お客さんよぉ、綺麗だなァ?』

「触るな」

同じグルーガンとはいえど、この世界のグルーガンはキチガイじみているようで何が楽しいのかニヤニヤと口の端を釣り上げ、モリガンを見る


『楽しそうだなー!ほら、せっかくお客さんも来たんだし、どうせならパーティでもやろうぜ!な!』

『ふふ、仕方ないから許してあげましょう。レイジ、ミヅ、準備をお願いね』

『了解です!』

『かしこまりました』


準備のため、と執事とメイドが奥の部屋へと消える
その間もこの屋敷の主人らしきルアは楽しそうに客人として迷い込んだ7人を観察する


『……どのエンドロールを選ぶかな、お客さんがたは』


たった一瞬、ニタァと悪魔のような笑みと小声で呟かれた声は誰にも見られず聞かれず、その横に座っていたレナですらニコニコと笑っているだけ


『【本編】じゃ語られることのない【真実】が散りばめられてるぜ……?誰が、一番に見つけるかな?』


そんな屋敷の主人の意味深な言葉に重大な鍵が潜んでいるとは、誰も知る由もない
呟いた本人ですら、知らない仕組まれた何かへの最大の仕掛け


「ルーちゃん!凄いねッ!」

『そうか?普通だろ?気に入ったなら、好きなだけいるといいぜ!ここには誰も寄りつかないからな!』

「寄りつかない……?」


タナトスがその言葉の意味を問いただす
なぜ、こんな綺麗な屋敷に人が寄りつかないのか

その問いにルア答えずニコニコと笑っているだけで、代わりに豪華なティーセットを運んできながら、メイドがサラッと答えをはいた


『このお屋敷にはこんな言い伝えがあります。【人造人間にゾンビの住み着く屋敷】だと……』

「ひっ……!」

『ふふ、言い伝えですよ。ご安心なさってくださいね。実際にそんなものここで生活をしていて見たことはないですから』


クスクスと楽しそうに怯える樹乃やソールをからかうように言えば、そのメイドの背後をあの執事が、ご馳走を持ったまま睨みつけていた


『お客様へ不安や不信感を与えてはいけません。旦那様もです』

『いやぁ悪い悪い!』

『全く……』


レイジが出てきたことによって寿斗の視線はその、別人の筈の執事へと注がれる
いくら見れども、何故か、いつも通りに【読めない】のだ
それも視線を注いだ執事だけではなく、ミヅキにルアにレナにソウミにヒイラギにグルーガンすら、全く【読めない】


(……どういうこと……?)


全員純粋ということだろうか。しかしそれは直感であり得ないと悟った。
何故なら、誰一人として正気を感じられない

自分たちの知っている人物とまったく同じ雰囲気感じるというのに、中身は驚くほどに違う。
レイジやソウミにヒイラギにグルーガンに至っては見た目も若干違っている。

それでも、同じ雰囲気なのだ


(……これは、ちょっと、厄介事に巻き込まれた感じぃ?)


「ねぇれーじたんれーじたん」

『なんでしょう?』

「どうやったら【此処】から、出ていけるのぉ?」

『……これは、これは。この嵐の中外へ行かれるおつもりですか?』

「そういうことじゃ、ないよぉ、僕が言ってるのは」

金髪のあの髪型のまま短髪になっているレイジと名乗る執事へ仮面越しに威圧をかけてみれば、その執事は困ったように笑った


『どうやら、今夜のお客様は手強いようですね。……そうですね……それは、あなた方が【俺達】の【真実】を見つければ、この【舞台】も終わるでしょう』


もちろんそう簡単に見つからなければ、そう簡単に舞台は終わらないのがお約束ですが。と冷慈にはあり得ないような策士のようなポーカーフェイスで執事は人差し指を寿斗のズレた仮面の間から口元に添えた


『どちらが、先でしょうか。【貴方方】と【俺達】。先に【真実】を見つけた方が、勝ちなのです。さぁ、長い舞台だ。先にどうぞ、腹ごしらえを』


綺麗に整えられたテーブルの上、美味しそうな匂いをさせながら豪華な食事やワインにシャンパンが並んでいた

(そう、ここは……舞台の中。XXXあとの【彼ら】の見ている夢の中なのです)



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