ガタガタ……? 「何だ……ここは……」 死を見慣れているはずのモリガンが一歩後ずさる 寿斗は仮面越しにでも分かるほど嫌悪しているようで、口元が歪んでいた 樹乃にソールは怯えネメシスの背後へと隠れる ネメシスは驚いたまま固まり、ヒュプノスとタナトスだけが平然と中へ足を踏み入れる 【硝子の棺】が4つと【木製の棺】が5つ並んでいる薄気味悪い部屋。 その【硝子の棺】に眠るのは、綺麗な死に顔をしている【探していた人物】 「センセー……?」 「れーじたん!!」 「宋壬……?ま、また、寝てる、のか……?」 「……約束が違うぞ、グルーガン」 自分たちの知っている服装ではないにしろ、おそらく神化 した状態の衣装を着て、式詰まった花の中血の気のない顔で死んでいる 「ル、ルーちゃんも……?いる、の……?どれ……?」 青ざめたソールが、中の見えない【木製の棺】の一つをゆっくりと開いたその瞬間だった 「うぁああああああ?!!!?」 「わぁあああッ!?」 ひどく慌てたように【木製の棺】の中から探していた方の血色のあるルアが飛び出してきた 「ルーちゃんッ!!!」 「ソ、ソーちゃん!?あ!?おぉ……なんだ?皆いんのか!」 いやぁ、知り合いのいるところに落ちてきて生きてた!奇跡だな!とルアはホッと胸を撫で下ろす 途端に泣きながらソールに飛びつかれてまた棺の中へひっくり返ってしまったが 「うわぁあああんッ!!!ルーちゃんッ!生きてるッ!?」 「!?い、生きてる!生きてるからちょっと離れよう!?な!?」 「やだやだーッ!!!」 完全に戸惑いと混乱をしているルアへモリガンが、どうしてこの4人が死んでいるのかを聞こうと近づこうとした瞬間、他の【木製の棺】からドンドンッと叩くような音が聞こえてきた それも二箇所から 「……レーちゃん、なの」 「……」 ヒュプノスがなんの迷いもなく、一つの棺の前までいき、蓋を開ければ 「……っヒュプノスくん!!癒し!!俺生きてる!?」 「……生きてるの」 「うぁああああああよかったよぉおおおマイエンジェルに再会出来たよぉおおお!あぁああネメシス様にモリガン様まで!ひぃい!」 どうやら、【硝子の棺】の存在はまだ麗菜の目には認識されていないらしく、見つけた仲間の姿にいつもよりも変態さを増しながら喜んでいる 「あっはっはっは面白かったー死ぬかと思うと笑っちゃったよー!あ、タナトスくんありがとー開けてくれてー」 「あぁ」 美月もタナトスが棺を開けたことにより出てこれたらしくいつもと同じく軽く重大なことを言いながらケラケラと爆笑をしていた 「あれ?柊さんたち死んじゃってるの?」 「え……?」 そんな美月が一番に気づいたらしく、【硝子の棺】の中に眠る存在の生死を確認する 美月と一緒にその存在をじっと見つめた麗菜は気付いた 「……違うと思うよ。つか一緒なんだろうけど、なんていうのかね……俺の直感が言ってるからさ。こいつらは【生きてる】って。どこに【落ちた】んだろー」 「あー……やっぱり?」 「直感なめてもらっちゃ困るわぁ」 「ちょっと待ってー!ストーップ!どういう意味?レナレナ教えてー!」 未だにソールが離れないため混乱しているルアの事は放置し、麗菜と美月の言葉の意味をネメシスは聞き返す 誰一人としてその言葉の意味を理解するのは難しいと悟ったのだ 「あー…さっきまで【表舞台】にいたんだけどさ、そん時冷慈たちちゃんといたんだよね。それに執事服とかなんかゴシックだったし。ほら俺らもそうでしょ?そんな恰好してなかったんだよね。多分、この部屋には居ないんじゃないんかな。そこで死んでる【冷慈達】は知らないけどね」 どうやら、【硝子の棺】の中にいるのは、【現実】の冷慈達ではないということが言いたいらしい それを聞いて少し安心したように4人が胸を撫で下ろす 「あ、そうだ……これ……確か……誰だっけ……【観客】くん達が言ってたの……【終幕】を届けろってどゆこと?」 すっとあの封筒を取り出し、もう一度中の紙を取り出す そこに書かれていた文字は…… 「【1930年 友人の死に耐えれず自殺を図り【満田 レナ】永眠】……?……さっきと違う……?」 「あ、おれもだー!【1930年 不慮の事故により【雨宮 ミヅキ】永眠】だってー!うっはー死んでるんだ!あ!だから【棺に入れ】って書かれてたんじゃね?」 「いやいや……だとしたら本来【中】に入ってるのは【あーいうの】じゃね?」 なんとかソールを宥めたらしいルアがソールを肩車した状態で、【硝子の棺】の4人を指差した 本来いなければいけない【遺体】がいない不思議と ネメシス達の見た、血の気も体温もない、心臓の止まっていた【彼等】 「わかった!あのメイドさんと夫婦が【遺体】なんだよ!」 突如とネメシスが叫んだ 「……メイド?みづもメイドだよね」 「……ちと情報が無さ過ぎるね……」 「そういえば……三人とも【あの三人】と全く同じ衣装着てるんだねぇ」 寿斗のその発言でなんとなく予想がついた どうやら【裏舞台】には自分と同じ【役者】がいるらしいと 「……」 「ルーちゃん?どうしたの……?」 「え、あぁ、うんなんでもないなんでもない!」 クシャリと音を立て、ルアは見直した【終幕】の紙を握りつぶした (嘘だ。【観客役を演じていた村娘役の少女に殺された】なんて。でも、もし本当だったら……この【裏舞台】の【俺】は……【あの子】に、殺されてる……?) 動揺を出さないようにと、お得意のいつもの笑顔を貼り付ける 「とにかく、ここ出てみよっか。どっかに冷慈達落ちてきてるだろうし。探そう」 麗菜が眠そうなヒュプノスの手を引きながら、その部屋を出て行く 【現実】の【人物】を探しに 「あ!ま、待て!私も連れてけ……!宋壬を探すんだ!」 「大丈夫大丈夫皆で行こうな!」 (開かれなかった【棺】はあと【2つ】) [*前] [次#] [戻] ×
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