思い出した? 「……そうだ!宋壬だ!いなくなったんだ!」 ふいに樹乃がそう叫んだ。 それは今の【主役】が【此処】へ迷い込んだ理由。ネメシスとヒュプノスが先に思い出した、事件。 突如として自分たちの目の前から、まるでプログラムだったものが消えるかのように、映像が消えていくように、消えてしまった【仲間達】 残ったのは、何故か、雨宮の双子だけ。 消えた【仲間達】は消える間際、叫んでいた 【消えないでくれ】と。 消えているのは、彼等のほうなのにおかしな話だと。 「……れーじたん……が、いるってこと……?」 『……。探されてみてください。【お望み】の【結末】が今宵、貴方と【彼】を待っています』 執事が寿斗へそうにこやかに告げる。なんとも嘘くさい笑みで。 まるで早く探しに行けよと急かすように、黒い笑顔で、ニコニコとしているのは、【偽者】の【悪党】。 「そ、宋壬を探さなきゃ……!きっと閉じ込められてるんだ!こいつらに……!」 『……人聞きが悪いね。お嬢さん、違うよ、これは【君達】が間違ったから、起きたんだから。あぁ、いや間違ったのは【彼等】だったかもしれないね』 さっきまでは樹乃に対しても柔軟な対応だった彼は、突如と本性で喋りだす 嫌味ったらしい口調の余裕のある綺麗な発音で。 「ど、どういうことだ!!」 『だから、さっきから言ってるでしょ?それを探すんだよ。馬鹿なの?……もし見つけたとしても、【主役】はどの結末を選ぶかな?』 待ち受けるはBadEndか、それとも別の終幕か。 『【樹ちゃん】に免じて、一つ教えてあげるよ。……忘れないで。【俺達】はあくまでも、【役】だってことをね』 「だから……どういうイミだ!難しいことばっかり言うんだな!こっちの宋壬は!」 『ソウミ様がそう【アドリブ】をなさるならば、俺もお一つ、そちらの綺麗な狐面のおニイさんへ……』 「……」 『【釣人】くんのお願いごとは【誰かさんの幸福】でした。その【誰かさん】は今、貴方の探されている人物……』 「れーじたん……それを今、言うってことは、【此処】にれーじたんが隠されてるってことで正解、なんだねぇ?」 『えぇ、もちろん。貴方方が見つけてくれなければ、【俺達】はいつまでも【演じ続ける】羽目になるのです』 幾度となく、夜を繰り返してでも。とグレーの瞳は大広間のドアのその向こうを見つめた。 相手の心境が読めないこの世界では、こういったちょっとしたことに掛けるしかない。と寿斗はその視線のほうへ、探しに出て行く。 「……」 『アンタは探しにいかねぇのかァ?【俺】をよ』 「私が探しているのは、お前ではない。【グルーガン】だ」 『俺もそうだぜぇ?まぁ、今の聴いてりゃわかんだろぉ。行き着く先はよぉ……』 今の今まで、ワインを飲んでいたキチガイのようなグルーガンは椅子から立ち上がり、モリガンにしか聞えない声量で耳打ちをする 『【皆同じ】なんだぜ?』 例え、【結末】にたどり着くまでの道順が違ったとしても、答えはただ一つ。と言うと、片手をヒラヒラと振って、グルーガンは奥の部屋へと退屈そうに消えていった。 「もう少しマシな返答をよこせばいいものを……。仕方が無い。探してやる。待っていろ変態」 モリガンもそう言うと大広間から出て行く。 樹乃はいつの間にやら、出て行ったらしくその姿はない。 大広間に残ったのは、タナトスとソールの二人。 「ルーちゃん……探せば、またいつものルーちゃんに会える、の?」 『おう、そうだぜ?』 「絶対?」 『俺が嘘つくと思うか?【洸ちゃん】?』 知らぬ名でソールを呼ぶ【彼】は、複雑そうな表情をしていた。 一体、さっきから彼等が呼んでいる、知らぬ名の正体はなんだろう。 「さぁさぁ!貴方も貴女も!【まだ知らない】ことを探しに行かれてくださいね!」 メイドのミヅキがグイグイと残った二人を大広間から押し出しその大きなドアを、にこやかに閉める。 (探せば、全てがわかるらしい) [*前] [次#] [戻] ×
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