【嘘】





「あぁああああああ!!!!」


真っ逆さまに落ちた先、宋壬は綺麗に着地したものの冷慈は顔面からグシャっと着地をした


『あぁ……いらっしゃいましたか』


その声のする方を見れば、自分に妙に似ていて同じ執事服を着ている青年が立っていた


「うぉわぁ!?」

『……初めまして。俺であって俺でない、【冷慈】くん』

「は、初めまして……」


執事よろしく丁寧に挨拶をされ思わず釣られて挨拶を返した時、少し離れた距離から金属同士のぶつかるような音が聞こえて慌てて振り返る

そこには宋壬が、宋壬ではない宋壬に似た【誰か】と日本刀同士でぶつかりあっていて、思わず目を見開く


(宋壬……あんなにあいつ俊敏だったっけか……?)


初めて見る友人の俊敏かつ殺気立った動きに立ち尽くす


『驚いてるところ悪いな。その【封筒】と【針】を探してたんだ。いい子だからくれるよな?』


急に口調の変わった執事が冷慈を脅すように首に刃物を当てがう


「っ……」

『今宵、一寸狂わぬ【舞台】を【観客】のために……』


何故か神化しようにもできない空間で意を決したように冷慈もあの二本の【針】で弾きかえす


「よくわかんねぇけど、これをアンタにやるわけには行かねぇんだよ」

「そーいうこったな」

「柊さん!!」


いつの間に落ちてきたのか柊が冷慈の真後ろで、自分にどこか似ている青年にあの大剣を突きつけていた


『物騒〜こわいんですけどぉ』

「黙れ俺の顔でそんな喋り方すんじゃねぇ気色悪いだろうが」


地味に理不尽にキレている気もするがそこはあえて触れないことにしておく。


「柊、それを言うならこっちもそうなんだけどな」

『ひゃっはっはっは!オレが気色悪いってか?』

「あーもうちょこまかしないでよ。八つ裂きにされたいのかな」


グルーガンも、やはりセットだったのか、同じ金髪の奇抜な髪型のそれと向かい合っている

どういうことか、どこか自分と似ていて、同じ服を着た相手

冷慈はチラリと大広間の時計を見れば、10時24分を指し、止まっていた


(……あれ?あの数字……)

どこかで見覚えがある。と思考回路を回してみるものの大事なことに限って思い出すことができない


『そうだーいいこと教えてあげよっか、ひいくーん』

「……なんだ」

『【ネメシスさん】が君を探してるよ』

「……ネメシスが……?」

『ほらほら、【皆】で協力してでて行かなきゃ、その【真実】の入った【終幕】を使って』


ニコニコと笑って急かすように楽しそうに柊を追い詰める
おそらく、一番頭の回転の早いであろう柊にはわかったであろう【事実】


「……ネメシスが【此処】にいるんだな……?」

『さっすがぁ俺ー。そうだよ?今頃きっと青ざめてるよ。でもオレが愛してるのは【ネメシス】じゃないんだ〜』

(なに聞いてもないこと言ってんだコイツ……)



柊の聞いてもないことをペラペラと話し出す彼の言葉を器用に戦いながら耳に止める冷慈にグルーガンに宋壬

それがどういう意味か、理解できたのは冷慈以外の三人



「……【樹ちゃん】ですか……?」

『……』


「【壊ちゃん】だよね」

『ヒャッハァ!分かってんじゃねぇかよォ』


「【袮音】とかいう女か」

『立派な観察眼と思考回路発見しちゃった〜。そうそう、どうしても俺たちは戻らなきゃいけないんだよ。【君達】の【想い】が埋め込まれた【嘘】だからね』



「……。クレージーなこったな……!」

『!?』


カキンッと音が響き、執事の彼の短剣を冷慈が叩き落とした
その目は覚めたと言わんばかりに見開かれ、【狂った】ように嘲笑をする


「はは……、わかった、分かったよ。なんで【俺達】が【此処】に【呼ばれた】のか。思い出したぜ。……相変わらず、細かい設定が好きだな……本の読みすぎだぜ……【お前ら】」


どこを見ているのか冷慈が遠くを見つめながら、呟いた
【此処】へ【呼ばれた】理由……


「……【死んだ双子の夢の中】、【此処】が時間を止めたから、【死んだ】んだ、彩詞も哀詞も……」

「……だから【バッドエンド】を回避したくて、あの【2人】が……動いたんだ……」


まるで、電池切れにでもなった玩具のように【命】と【イシス】の前で、いきなり突然死をしたはずの【双子の夢の中】

こんなはずじゃない。と泣き叫んだ【命】と【イシス】の【願い】

それを【叶える】ための【双子】の【茶番劇】


「……【本物】は、どこだ……?」

探さなければ。【双子の残りの人生】を
【現実】に出てきた【偽者】の【双子】と【此処】で【眠る】自分達の知っている【本物】の【双子】をすり替えれば全てが終わる

この【夢】の【作者】は【本物の双子】
まだ【死んでいない】はずの【双子】


『……さぁ、何処でしょう。【現実の俺】の記憶力を少々侮っていたようですね』


解けた【謎の半分】をしっかりと握りしめ、【本物】を探しに外へと向かう


誰もいなくなった、【棺】だらけの部屋
まだ開かれていない2つ残った【木製の棺】


(さぁ、謎の残り【半分】を解きあかせ。全てが解けなければ開かない【木製の棺】)


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