交わされた無駄な勝負

「ねぇ、満田さん」

「あ?」


今現在何がどうしたのかはわからないが、俺の目の前にナンパ野郎がいる
しかもにこやかに笑って。いい予感が微塵もしねぇよ

そう思った俺の予感はやはり当たってしまった


「俺とさ、勝負しない?」

「酒の飲み比べはパス。俺飲めない。っつうか弱い」

「えー。強そうなのになぁ〜。それがダメとなると、どうしようかなぁ……」


わざとらしく考え込むその姿に、悪態をつく。一体何が言いたいのかハッキリしない
こういうの、嫌いなんだよ。遠まわしというか、わざとくさいというか胡散臭いっていうか


「もう、なんだよ!!ハッキリ言え!勝負なら負けんぞ!」


あまりにもったいぶらされて、相手の鼻先を人差し指で指さしながら、宣言をしてしまったが、今の俺にはその言葉の意味を考える余裕もない
絶賛イライラタイムなのである


「こうさぁ、いつまでも喧嘩してるわけにもいかないでしょ〜?だぁから〜、惚れたら負けってどう?」

「やってやろうじゃねぇの……よ?え?な、なんて?」


とんでもない提案に、引きつりながらもう一度聞き返す。こいつは馬鹿なのか。いや俺も馬鹿だけど、こいつはもっと馬鹿だ
くそ、聞き間違いであってくれ、どうか聞き間違いであってくれ


「だから、惚れたら負け。惚れさせたら勝ちって簡単なゲーム。はい、決定ー」

「いやいや!?俺の意思は!!」

「今、やってやるって言ったからねぇ」


確信犯か?え?っていやいや、俺の馬鹿!やってやろうじゃねぇのよ!じゃねぇよ!
とんだ災難だ。本当にとんだ災難だ。災難だ。
大事なことなので複数回言います


「だ、だいたい!それ俺に不利だから!いや、俺がアンタに惚れることもないけどね!」

「そんなのやってみないとわかんないでしょー?ほらほらー」


そう言って、自然な動きで俺の手をとって引き寄せる
近い、うん、ごめん無理だわ
だがしかし、これはもう既に戦いであってその戦いは始まっているわけだ
くっそここで動揺するとまるで相手の思うつぼか。そうだな思うつぼだな


「ごめんなさいね、私、ダンスはできなくってよ」


クスクスと笑うフリをして手を叩き落とす。あぁ馴れなれしい。やだやだ
しかし、これは惚れたら負け……つまり俺がこいつに惚れずに惚れさせもしなければいいんではないんだろうか!
ピーンと思い立って距離をとった。それならかかわらなければいいだけの話だな!会うことも減って一石二鳥ではないか


「じゃ、俺はサボる!またな!クラスメイト諸君!」


バイビー!と言うようにそのまま俺は教室から出ていく。
さぁ!これで開放されたも同然だぜ!とウキウキワクワクしながら学園を飛び出した
大自然が俺を呼んでるぜぇええ!なんて厨二くさいことを思いながらグラウンドをも駆け抜ける。

風が気持ちいい。空が綺麗。目に映る自然が綺麗。ああ、幸せだ

そう思うと自然と笑みがこぼれる
グラウンド走りながら笑顔とか俺、結構危ない奴じゃね?

……今更か。今更でした。すんません




(人間って嫌なところだらけだけど、自然を見て幸せ感じれるところは好きだな。他の醜いところはいらないのに)


そんな俺を教室の窓からクラスメイト共がしっかり見ていたなんてこと何も知らずにグラウンドの途中でクルクルと3回転をして1人で

「ジャーン!」

なんて言いながら決めポーズまでして、何がしたかったのかと笑いがこみ上げてくる
そのままグラウンドに寝転んで思わず自分のした行動に吹き出した

あぁもうこれだから馬鹿なことできるって最高だ

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