許さないよ?
「もう、もうやだ、やだ……っ」
「あっはっは!……私は、お姉ちゃんを許さないよ?私の"コイビト"殺さないでよぉ」
「……え、な、なにいって……」
目の前でずっと悪魔がトチ狂ったように俺に現実だけを突きつけてきている。
どうやら俺が、ディディを殺してしまったらしい。
「あーあ。せっかく、お姉ちゃんが出てこなかったら、ディディくんとお付き合いちゃーんとしようって、思ってたのになぁ。かっこいいし優しいし〜一石二鳥じゃん」
「……許さない。それは、俺の台詞だよ……」
あまりのその異常さとウザさに脳みその血管がちぎれそうだった。
まるで、ディディを道具としてみていると言わんばかりの言葉も何もかもがイチイチこんな状況の俺を刺激する。
できるなら今すぐにでも殺したい。消えてくれ。と心底思うけど、この邪気とやらを外へ出してしまったのは、俺らしいし、もうどうしたらいいのか、わからない。
「……いやだ、ぜんぶ、いやだ……誰も、邪魔、しないで……俺の世界壊さないでよ!!」
そう叫べばさっきまで俺をきつく閉じ込めていた蔦が俺と息をすることをやめてしまったディディをまたすっぽりと包んで、さっきよりもキツく頑丈に外と中を遮断した。
もう冷たいディディに外に聞えないことをいいことに大泣きしながら抱きついた
前みたいに抱き返してはくれない。こうしてしまったのは、全部自分のせいだと塞ぎこむように、ただひたすらに返事もないディディに謝る
「ごめん、ごめんね……っ何も、返せてないのに、ころ、殺しちゃったぁ……ディディ……っ」
あんなに綺麗だった人に邪気なんて重過ぎる。おまけにトドメをさしたのは紛れも泣く俺だった。
「もう、一回だけ……っ笑ってる、ところ、見たかった……っ」
ひたすらに泣きながら、外とかかわりを捨てた蔦の中で泣きつかれて、冷えてきた身体を、最愛の人の亡骸に寄り添わせて、死ぬように深い深い眠りに落ちていく。
「……姉ちゃん……?」
「…………れーじ?」
「……で、ディオニュソスは……?」
「レナレナ!!ディディ!ディディは!?」
「……あのね、ディディ、私の代わりに、死んだの……止めれなかった……どうしよ……っ」
「……姉ちゃん……」
「満田……大丈夫か?」
「みづ……っ、ディディ……殺しちゃったぁ……」
「……好きな奴、守れて、死んだなら、本望だったろうな。大丈夫だ」
「皆……っ、ごめ、んね……っえ?」
「……違う、アンタ、姉ちゃんじゃ、ない」
(姉弟だから、分かる。こいつは俺の姉じゃない)
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