選択を間違えた

「いい、大丈夫、だから……!」


傷だらけのその手にこれ以上頼っていい気がしなくて、その手を拒んだ。
そう、これは原因は俺。頼ることは許されないしっかりしなければいけない。問題点はすべて俺。

なのに、この優しさに甘えると全部がガラガラと音を立てて崩れ落ちて待ち受けるのも最低で最悪な悲劇な気がした。


「ほらねー、ディディ、こっちだよ」


あの子の猫撫声がして、ディディの手がスルッと蔦から外へと外れていった。
これで俺だけが一人、また蔦の中。
外から聞えてくる会話を嫌でも聞きながら、早く自分が腐食していくのを見ていなければ

そう思っていたのに。あの子を出て来れないようにするために。と。


「ねぇ、ディディ、聞いて?私ね、お姉ちゃんと一緒なの。だからね、今から言うからね、よく聞いてね?」

「え?」

「『助けて?ディディ』って」

「……いわれなくても、そのつもりだよ」


あぁ、だめだ。そんなこと、思っていないのに。蔦のその向こうで、ディディが苦しんでる声が聞えて、蔦を火事場の底力でぶち破った。

そこには枷を黒光りさせながら、ディディ自体に黒いフィルターがかかったような状態でディディが倒れていた。
絵でで言うなら、乗算で、綺麗な色で塗られて完成していたディディにだけ黒い色を重ねたような。
ちゃんとしたの色も見えるのに、どこか黒い。


「……何、したの……?」

「……あ、ははは!本当に信じちゃうんだもん!!おかげで半分も私の邪気、このおにーさんがもらってくれちゃった!」

「……はい?」

「お姉ちゃん、あのね、ディディーおにーさんはね」


今の説明で大事なところは分かっているけど、それでも、頭が混乱して聞き返さずには居られなかった。

そして一番聞きたくない、だけど事実が奴の口から言葉になって、俺へと突き刺さる。


「お姉ちゃんのせいで、死んじゃうんだよ?」

「……俺……?」

「お姉ちゃんが、嘘つきだからっ」


まるで語尾にハートマークでもつくように、かわいく言っている。
意味はわかるけど、わからない。あんたがこうしなければ、ディディはこうならかったし、俺があんたを押さえ込めば全部が丸く収まったはずなのに。

ディディに被害が及ぶ理由が、わからない。


「この、"加害者気取り"のお姉さんめっ!見ててちょー笑えるんですけどぉ」

「……は?」

「"私じゃない、悪いのは邪気だ"とか"私がこうすればあーすれば"とかもううんざりなんですけどー。っていうかそんなこと言って悲劇のヒロインかっての」

「……」


口角から血がたれ落ちるほど、気づけば唇をかみ締めていた。
なんで、こんな奴に俺は馬鹿にされて大事だと思った人まで殺される必要が、あるんだ。
自分が、俺の存在を使って、全部俺へ責任転換しているだけのあんな、穢れた奴に。


「あぁ、そーだ、じゃあじゃあ"可哀想"なお姉ちゃんにイイコト、おしえてあげるよ?」

「……」

「あれ〜聞いてくれないのぉ?そこの"ディディ"さんを楽にしてあげれる方法なのになぁ」

「……教えな、早く」


まるで、人間の世界の汚れた醜い女子のように、彼女は俺と、ディディを見て嘲笑うように口角を吊り上げた
その様はまるで、"ざまぁみろ"とでも言わんばかりに。


「ねぇ、お姉ちゃん、どんな気分?もし、この人が自分のせいで、苦しんでいくとしたらさ?」

「……っ」


苦しんでいるディディをぎゅっとすれば頭上で、また悪魔が囁いた。


「もういい!もういいから、謝るから、早く教えてよ!!」


泣き叫んだその瞬間、そいつが心底嬉しそうにニヒルと悪人面で笑ったのを見て、ゾクリとした。

頬から伝ったたった一筋の涙が落ちる寸前ディディが苦し紛れに囁いた


「……麗菜ちゃん……愛してる、よ……?」


輪郭で留まっていた、その一筋はその言葉と同時にディディの心臓の位置へと落ちて、消えた


「……う、そ……ねぇ、なんで、なんで死ぬの!?ディディ!!起きてよ!ねぇってば!」

「あっはっはっは!だから、言ったじゃん、おねえちゃん?"楽"にしてあげる、方法、なんだよ?」

「何が……!!」

「今、ディディくんの心臓に落ちたものはなんでしょうー?」

「え?」


これ以上、聞いては、いけないと脳が警鐘を鳴らすのに、奴はなんの遠慮も配慮も慈悲すらもなしに狂った笑みと下種た声で囁いた


「お姉ちゃんが、"殺しちゃった"ね。大好きな、人」

「っ……いやぁああああああああああ!!!!!!!!!」


(涙で生き返るなんてそんな御伽噺はどこにも落ちていなかったの)

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