やっぱり正解は

「……」


迷った末に、ゆっくりとその手を握った。ありがとう、と意味をこめて。
それから、傷だらけになってでも助けてくれようとしたその掌にありったけの願いをこめて唇を落とす。

(ありがとう。でも、私じゃない。まだいい人、いっぱいいるから。幸せに生きてね)


そう思えば、ふっと蔦が緩んで目の前が開けた。
当然驚いたような安心したようなごちゃ混ぜになった表情のディディがいた。


「麗菜ちゃん……!」

「……ありがとう。大好き」

「え?」


すれ違い様にそれだけ言って、通り越した。
だって、まだ、"責任"とやらをとっていないから。


「……許さない。ディディを巻き込もうとしてるアンタなんか、俺は許さない」

「……えー、なんのこと〜?」

「自己中で、皮被りで、我がままで、女子らしくて、要領がよくて。……ほんと、最低だね、人としては」


でも、その最低なこんな子であれば色々うまく世の中を渡れたに違いない。
俺の需要と供給は世間一般とどうやら遠くかけ離れていたようだから。

これ以上被害は出せない。


「ねぇ、来て。二度と出れなくしてやんよ」

「えー、どうしよっかなぁ」

「……まぁ、無理にでも一緒に地獄まで連れてってあげるよ、お姉ちゃんが、ね」


ガッと折れるんじゃないのかと思うような勢いで邪気の腕をわし掴めば、彼女はニタリと嫌に笑っていた、口の端を吊り上げてまるで俺を嘲笑するかのように。

いつまでこうやって他人を見下して信用しないのは、もう揺るがない、らしい。


「わぁい!お姉ちゃんと最期まで一緒だぁ」

「……そう、な」


そいつはとりつくかのように俺に纏わりついてゆっくりと俺を侵食する。
さっきの緑色と混ざっていく自分がとにかく汚いと思った。百虎もディディも慌てて俺を引きずり出そうとしているのを目で牽制する。

巻き込んじゃ、いけない


「麗菜ちゃん!」

「ディディ、ばいばい」


消失でもするかのように足元から徐々に消えていく俺に伸ばされた手は空を切っただけだった


「……っ、くそっ……!」

「……」


後悔と悲しみにくれたその顔に、痛いなと思いながら、この世界から存在を消すことを選んだ"私"のお話。


(全部、忘れて、神話通りかわいい奥さん見つけなよバーカ)

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