その手が傷だらけ
「……もう、その言葉はオレは聞き飽きたよ」
「え?」
「君も、麗菜ちゃんと同じで他人のために生きてただけだよね。……麗菜ちゃんが悪いように言ってるのはオレを動かそうとしてるだけでしょ?」
「……」
つまり、どういうことだ。最初からまとめないとわからない。
あの子は守り神で、ここの邪気を封印していて、それを開放したのが俺で。
その責任をとらせるために俺が現在こうなっていて。
でも、ディディいわく他人のために生きてただけ、ディディが動くように俺を悪く言っているだけ……
えっと、つまり、なんだ?
「そうじゃないと、自分が邪気を全部受け入れたりしないでしょ?そういう責任だったら、邪気も麗菜ちゃんに全部投げつけたでしょ?」
「……さぁ、どうでしょー!わかんないから早く、動いてほしいんだー!"私"の望んでる終わりに持っていってね、"優男"さん!」
きっと、そうじゃない、そうじゃないのに。
ディディの言っていることは正しいけど、違う気がした。
あの子は黒かった。そう、真っ黒。邪気を受け入れたからだけど真っ黒。
ねぇ、真っ黒なんだよ、濁りもないほどに綺麗に邪気に染まってたってことなんだよ?
そんな子の望んでる終わりなんて、考えなくたって、わかるのに。
(動いちゃ、ダメだよ、ディディ)
そんな俺の意志を無視するように足音だけがこっちに近づいてきている。
あぁ、嫌だ。来ちゃ、だめなのにどうにもできない。
でも、こんな馬鹿みたいに頑丈な蔦を裂けるわけもない、はずだから。
早く諦めて皆のところに戻ればいいのに。
「くっそ……なんで、こんなに硬いの、コレ」
(あぁ、もうなんで来るの)
きっと、今回は最初から全部俺があの子に踊らされていただけ。
だから、あの子を今度は俺が二度と出て来れないようにしなければ。
「麗菜ちゃん、そこいるんでしょ?」
「……」
あえて返事はしなかった。早く戻れっての。と思っているから。
きっとその後ろじゃあの子が口の端を吊り上げて、滑稽なものでも見るかのように見ているんだろう。
あら、そんなこと考えてる間にもう身体の半分を緑色に侵食されていた。
ここまできたら早いとこ染まってしまって、あの子をどうにか消すことが先決だ。
「っ……」
「!!」
そう思って軽くため息をついたとき、蔦と蔦の間、ものすごくしっかり閉まっていたそこから見覚えのある手が出てきた。
文だけ見ると軽いホラーです。えぇ。
「麗菜ちゃん、いるんでしょ?ね、一緒に外、出よう?」
「……傷、だらけじゃ、ん……馬鹿、だ」
傷だらけになってでも差し伸べられたその手を私は
(受け取るべきか、拒むべきか)
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