黒い自分

「どこ……?」

俺がその場所に着いたときには、もう辺りに邪気と呼ばれる禍々しいものはなくて、あのえげつなく聳えるように生えていた植物も、綺麗さっぱり消えていた。
おかしい。それだけならまだバンバンザイなはずなのに、嫌な雰囲気が、日の差し込む森の中に不釣り合いに漂っている


「……何?」


百虎が横で、威嚇をするから、何事かとその方角の方を振り向けばそこには、ワタシが、いた。
あの子で間違いはないんだろうけれど、どうして、そんなに成長したのか、今の俺と全く同じ姿形をしていた

違うのは、色合い。

黒く光輝いている。ある意味綺麗。


「濁った、白がやっと来たの?」

「え……」

「ねぇ、知ってるでしょ、貴女が一番。濁った白よりも、純粋に輝く黒のほうがこの世の中を、人生を謳歌できるって」


何が、言いたいんだ。と少し考える。まぁ、目の前にいるのも自分ならば、その思考は同じはずだ。

どうやら俺のような"偽善者"は不必要でしょう。と言いたいらしい。
考えてみてもそれにしか答えはたどり着かない。


「……純粋な、白にはなれなかったね」

「……誰のせいで、なれなかったか教えてあげるよ、麗菜ちゃん」

「……言わなくても、わかってるよ。レナちゃん」


そうヘラッと言えば、消えていたはずの蔦が締め上げるように下から伸びてきて籠でも作るように俺をすっぽりと包んでしまった
外の世界と遮断でもされるかのように綺麗に隙間すらない。
これは、困ったな。と少しだけ思ったけど、これで開放される気もした。

他人の期待に答える必要がなくなったと、思った。


なんだかゆっくりと思考が動くことをやめていって、眠気もしてきた。
視界が眩む中蔦でできた籠の中を見渡せば、まるで何か粒子が舞っているように見えた




「麗菜ちゃん……!」

「ディディ……!来てくれるって、信じてたよ」

「え?」

「ね、もう、大丈夫でしょ?あの蔦ね、XXXxXを犠牲に消えてくれるんだって。間に合わなかった」

「ー……ちょ、ちょっと、待って。何、言ってるの?」

「うん、だからね、レナちゃん、を助けるのが、間に合わなくてね、もうぜーんぶあの蔦の中、なんだってば」


「……ねぇ、本当に、君、麗菜ちゃん?」

「なんで?どっからどうみても"俺"じゃん」

「……」



(声が聞えた。嫌いで、大好きな声が)

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