野生児ばんざーい

「……あの、邪魔なんですけども」


葡萄色の髪のチャラ・チャラ男は俺の前から動かない
正直に言おう。目障りである。そして俺の嫌いなタイプである
これで、女慣れしてる発言でもしようもんならそれはもうまさに嫌いになるだろう

まぁ、俺の勘は外れないんだけども


「やぁやぁ〜、君も転校生ってことだよね?こんなに可愛い子ちゃんが来てくれて嬉しいなぁ〜」

「……」


ほらきた。なんか雰囲気からして女引っ掛けまわしてそうだもんよコイツ
そう思って、ギロリと睨みつけて、足を振り上げる
幸いな事に、まだ寮にいってないので私服のままなので、ズボン着用なのだ

振り上げた足は綺麗にそいつのあごへとクリーンヒットをした


「げっ……!」

「あでっ!」


後ろで弟の冷慈の声がしたが、まぁこれは仕方がないので、俺は悪くない。
よしそうしよう、それがいい


「ひどいなぁ〜いきなり蹴るなんて。でも、女の子の割りに強いんだね〜」

「え、どこですかね、女の子って」


わざとにキョロキョロと探すフリをすればキョトンとする葡萄くん。
ざんねんでした。俺はそういう軟派野郎とオトモダチになるくらいならゼウスさんのところで踏んでもらうわ。と胸を張って言いたいところだ


「すいませーん、俺ってば、ナンパな人が、大っ嫌い、でつい酷いこと言ったし、足が出ちゃいましたー」


全員が停止した中ヘラヘラと喧嘩を売った俺を、冷慈と柊さんだけが溜息をついてみていた
こんな奴が神様?いやいやぁ、やめてくれ。まじで


「んじゃ、他の可愛いちゃんとした女の子とアバンチュールして、揉め事に巻き込まれてください。んでは!」


キラッというような語尾で言って、生徒手帳の地図を片手に寮まで一人で先に歩いていく
なんて最悪なスタートだ
久しぶりの学園生活だぞ、おいコラ


「はぁ……あんな輩が神様とは……終わったな。世界」


葡萄くんの第一印象が色んな意味で濃いすぎて他の奴等を見ることも忘れてしまった





「あ、えっと……ディオニュソス、悪いな、あれ、俺の姉ちゃんで……」

「……ごめん、嫌味じゃないんだけどさぁ、似てるね、性格」

「うっ……!すまん……」


弟とあいつがそんな会話をしてるとも知らずに真っ直ぐ寮へと向かっていく
確かに女子ウケしそうな顔立ちだったな。綺麗と言うかなんというか。ほんの少し見てほんの一言聞いただけだというのに鮮明に思い出せる
……アホか。俺は早くあんなやつのことは忘れておこうあぁ嫌だ。なんて思いながら歩いて行く


「ここが俺の寮かー……」


どうやら、みづと兄さんと同室のようで、その中でさらに一人一部屋あるらしい
いわば3DKだろうか。いや3LDKか?


「おぉおおお!!俺ん家より綺麗だ!!」


自分の部屋へ入るなりその綺麗さに嬉しさが勝って、クローゼットとカーテンを開けたり閉めたり、ベッドに飛び込んでみたりと、まるで引っ越したての子供のようなリアクションをしてしまう


「やっべぇ……ベッドふかふか〜……惚れる、ベッド様」


くだらないことを言いながらふと思い出した。そういえば、制服に着替えて教室にいけって言われていた気がする

よいしょっと、クローゼットをあければ女子制服が入っていた
いや、そらそうか。うん
ただ問題があるとすれば、スカートの丈である
短すぎないか?ねぇ?


「……着れないぞコレは。俺警察に捕まっちゃう」


実際捕まるわけもないんだが、高校のときですら、女子制服のスカート丈は膝だったというのに
なんだこのけしからん丈は。セクハラし放題じゃないか


「……。くそ……着たくないぞ……」


嫌々着替えて、スカートの短さを痛感したとき目の前に畳んでおいてある布に目がいった
バッとそれを広げれば、制服のロングスカートだった
よし来た。これだ


「スッケバン、スッケバン」


自分の好きなスケバンスタイルになることに喜びながらそのスカートに着替える
ジャケットもベストも脱いで、ネクタイも外して、シャツとスカートで、教室に乗り込むと決めた

これが俺の戦闘スタイルである。いや、違うけどね

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