卒業式ばんざい

「およそ1年という歳月の中、諸君はワシが命に従い、己をかえりみて成長してくれた。諸君の努力が未来を変えたことに感謝する。今後も世界のため、尽くしてもらいたい。……ワシの口から伝えるべきことは以上だ。今までご苦労だった。諸君の行く道が、幸運に満ちていることを祈っている」


日がたつのもアッ!と言う間で、もう今日は卒業式だ
ゼウスさんが壇上でちんたら挨拶をしていただいてるのを若干コックリコックリなりながらも耳には留めておく。

だってゼウス様のお言葉ワッショイ。
ありがたき幸せです。


「卒業生代表の言葉。アポロン・アガナ・ベレア、前へ」

「はい」


アポロンがなにやらまたチンタラと言うらしい。親子揃っておしゃべりであるな。
私は感動よりも先に若干眠いというのに。
春の木漏れ日とは実にいいものである。

アポロンが口を開く頃にはもう意識の三分の二が夢の中だ


「数え切れないほど目にした学園の風景も、今日で最後なのかと思い、一歩一歩踏み締めて登校しました。この喜ばしい日に全校生徒が卒業できたのは、大勢の仲間との絆があったからこそです。何気ない日々を誰かに支えられてきました。改めて皆に感謝の言葉を述べたいと思います。ありがとう……本当に感謝しています。僕らはこの学園を卒業し、ここでの学びを胸に未来へと突き進みます。決して諦めることなく挑み続けると誓います。今まで、ありがとうございました」


沸き起こる拍手は聞えているからよほどいいことでも言ったんだろうか。
まぁ、どちらにせよこういう式典ものは得意じゃないんだけど私は。
本来の学生だった頃からいつも寝てるだけだったしなぁ

そうやって思いながら少し寝ていた間に早くも式は終わっていたらしく、ペチペチといつもの感じでルアからたたき起こされた


「ほら、終わったから起きろよなー」

「んー……」


ボケッとしながら薄らと目を開ければ、皆がもう思い思いに雑談を繰広げていた


「無事に終わりましたね……最初と同じように跡形もなく消えてしまった。とどまっているのは俺たちの記憶の中だけ」

「ああ。終わってほしくないような。どこかスッキリとしたような不思議な気持ちだ」

「あっれ〜、ターたん泣いてる?ここ、ほら。ほっぺに涙ついてるよ?」

「な、なんだって?って、このうそつきが!何もついていねぇじゃねぇか」


そんな雑談を楽しそうに冷慈が椅子に逆向きに座った状態で見ていた
他人にあそこまで楽しそうにしてる弟を見るのは久しぶりな気がした。



「神様でも卒業式で悲しんだりするんですね」

「それを教えたのはお前だろ?」

「だいぶ人間っぽくなったかなぁ?あぁ、もう神様に戻れなさそうだし、神様廃業しちゃおっかなぁ〜」

「ディディはもとから人間くさいだろ!」


ふと聞えたギリシャ神話のそんな雑談によっこらしょっと私も立ち上がって話に混ざりに行く


「確かに、妙に人間くさいよね。ディディ」

「え、麗菜ちゃんまで!?」


ケラケラと笑いながらディディをからかってから、結衣ちゃんのほうへと向きなおす
私はたぶん、この子に言わなきゃいけないことがたくさんある。
私だけじゃない、かもしれないけど


「結衣ちゃん、ありがとね〜。いてくれて助かったよ。お姉さん嬉しかったよ」

「……麗菜さん……」

「ま、元気で頑張るのよ。そしたらどっかでひょっこりきまぐれで現れるかもね、私とかは得にさ」

「ふふ、神様が気まぐれで現れちゃっていいんですか?」

「だって私神様だからさ?」


そんなことを言いながら、体育館を出て、行くべき場所へと全員で足を進める。
当然、忘れたわけではない。忘れたわけではないの、だが


「よし、帰るかね!」

「そう、ですね……」

「ん?そういや弟、どこに帰んの?」


私が疑問に思ってそう問えば、冷慈はターたんを指差した。
あぁそういうことか。
結衣ちゃんが笑顔になってるあたり、たぶん一緒に3人で行くんだろう

仕方ないからたまに日本神話に遊びにでも行こう


「うしっ!帰るべ!」


先に弟たちを見送ってから、残ったのは、私とディディとみーと兄さんとルアとトールさん
なんとも言えない若干複雑な空気が漂いだしております。
さぁ、誰がこの状況を打ち破るのか!


「小柚希くん……っ!」

「あ、陽さん、こんにちは」

「こんにちはではない!今日で卒業だと、聞いた、のだ、……ゲッホゲホ」

「大丈夫ですか?」


「貴様、私に黙って帰るつもりではあるまいな」

「え、トトさんなんで来たの」

「私に黙って帰るなど、許すと思ったのか」

「えー何でよう、理不尽、ってちょ、担ぐなぁー!」


陽さんにトト様がどこからかいきなり沸くように出てきて、私らには目も触れず目的であっただろう人物をつれ消えた。(校舎に戻っていった)

よって、いきなりなんともいえない空気再来なのである


「……。ルア、帰るか」

「だな……あいつら、色々大丈夫だといいんだけどな」

「「はははは」」


気まずい空気を打破すべくルアと帰ろうと言った時だった


「待ちなよ、満田ちゃん」

「ルア」


「ほら、一緒に、来てくれる約束でしょー?」

「……一緒に、来てほしい」


(その言葉を聴いて、ルアと拳をぶつけてサヨウナラしてやった。仕方ないからついていってやろう)

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