脱出せよ
「……離してくんないかな、ディディ」
「いやぁ、嬉しくってさー」
さぁ、誰でもいいから助けろください。さっきからずっとこの状況です。流石に周りの視線が突き刺さるのです。
例えば我が弟、妹とか、そのお友達だったり、その恋人だったり
「もー皆さー聞いてよー麗菜ちゃんがね」
「わかったから!!ちょっと黙れないか、葡萄頭また葡萄ジュースにすっぞ?え?」
よほど嬉しかったらしく、ずっとこの調子である。おまけに私に抱きついてきたままだ
いい加減、セクハラで訴えようか。あ、だめだ。誰も取り締まってくれそうなのがいない
せめていてもハデスさんぐらいだろうか
そうだ、我等が厨二な素敵なおじさんハデス様ぐらいだ
決して貶してはいないよ。褒めてるんだよ
「ハデスさんハデスさん。ちょっと貴方の甥っ子パート2をどうにかしてください」
「……ディオニュソス。やめてやれあまりにしつこいと嫌われるぞ」
ハデスさんの一声が効いたのかやっとこさ、私はディディから解放されたのである
あー、疲れた。と言わんばかりに肩をぐりぐりとまわす。
いや、本当に本気で疲れたぞ。くっそ許さん。
「いやーでも、本当さ嬉しくてさー」
「わかったから!もう、じゅーぶーんー嫌と言うほどそれ聞いたぞ!次いったら……わかってるわね?このくそダーリンが」
「ちょ、聞いた!?ダーリンだって!」
「……」
グリグリと踵で奴の足を踏みにじってやる。もがき苦しめお前なんかターたんの力によって海のモズクになってしまえ。
藻屑ではなくてモズクになってしまえ。
「姉ちゃん……おつかれ」
「まさか弟にまで同情されるなんて。ジーザス」
「お疲れ、だよな、ホント」
「きゃああああ!ターたんまじマイエンジェルふぅううう!!!!」
「おわぁあああああ!!」
純情ボーイ尊くんはマイエンジェルである。まじマイエンジェル。何?このツンデレなかわいい生き物。
おまけに弟とリアルホモってんじゃねぇ。掘られろ。盗撮はまかせろ。カメラはバッチリだ。
「っと、危ない危ない。私の腐女子の一面が暴かれるとこだったわ」
「……もう手遅れだろそれ」
弟達と戯れているといきなり、視線が、いや目線が、グッと上に上がった。
正確には、足が地から離れた。
まずい、なんだ、これは。
「ひぃいいいいいいいい!?」
「やっぱり麗菜ちゃんが一番だよねぇ。リアクションとかも」
「ディディやめて降ろして!!!」
どうやらまた捕まったようだけど、今度はなんというか後ろから持ち上げられているようで。
こう、中途半端に宙ぶらりんにされること恐怖症の私にはとても恐いことである。
とても、恐いことである。何度でもいおう。とっても、恐い、のだ
「お願いします!お願いします!やめて!降ろして!!今すぐに!!」
「えー、どうしてー?」
「ちょ、もう、ほんと、頼むひいいいいい!」
「離したらいいかな?」
「あーばっか!離すな!離すなよ!?絶対だからな!?離したらお前百虎の餌にすっからな!?あぁ!?」
(何がどうしてこうなった。誰かここに常識をくれ)
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