決意表明

「私、神話の世界、行ってみたい」


真剣にそう呟いた。
神様になる、それはつまり、人間からの圧に耐えなければいけないということは安易に想像できた。
だからこそ、私にしかできないことがあるのではないか。そう思っただけだけど


「それに、絶対おいて帰ったらうるさいのが一人いるんだよ……」


はぁ、とため息をつきながら言えば、みづも兄さんもルアもクスクスと笑っていた
笑うな禿げろ。そんな奴は禿げてしまえばいいのだ


「あら、酔いどれさんなの?趣味悪いわね」

「自分でも分かってるわ!!!!」


あぁ、本当、趣味悪い、私も、あいつもだ
なんで私なんだ、あいつこそデコからじわじわと侵食され禿げていくべきだ。最終的に爆発したらいいと思うんだが


「ほらほら、行かなくていいの〜?」

「みづうるさい、言われなくても行くわ!」


なんだかニヤニヤとしている幼馴染3人と両親を振り払うように学園長室のドアを全力で開けた
とたんにガスァアアッ!という大げさな音がしてよくわらない悲鳴も聞えた。

目の前には目を若干見開いたような表情のトールさん。


「……あれ、無口な男前代表トールさん……!れ?今の悲鳴って……え!?」

「……俺じゃない」


トールさんの指差した先、紫色の何かが見えました。
……なんということでしょう!素敵な葡萄頭がジュースにされいるではありませんか。


「……わ、悪ぃ……ディディ、生きてるかー?」


倒れているそいつをつつけば、いきなりバッと飛び起きた
思わずギョッとして逃げ出そうとすれば、それをはがいじめるように抱きつかれ身動きも取れなくなった

なんてこったい


「ちょ、おいってば……」

「……ねぇ、麗菜ちゃん、今、俺ね、話聞いちゃったんだけど、夢じゃないよね?」


なんだ、聞いてたのか、じゃあ話は早いんじゃないんだろうか
きっと、あんがい常識に囚われている神話の世界じゃ前代未聞かもしれない。
いや、人間が神になった時点で前代未聞である。そうでした。


「夢じゃない」

「いだだだだっ!!!なんでほっぺた引っ張ったの!?」

「それが人間が現実かどうか確かめるときにする方法だからです」

「何それ!ニンゲンって意外とドMなの!?」

「……ほんと、なんか、うん」

「え、そんな哀れな目で見ないでほしい」


とりあえず馬鹿なことを言っているこいつは置いておいて、教室に戻ろう。そうしよう。
もう盗聴されていたなら言う必要もないだろうし、今学園長室の方を振り向いたら私の負けだ。

まだニヤついてるのがわかるからこのままごまかすように教室まで帰るぞ。それがいい。


「あ、トールさん。ルアもこっち残ると思うよ」

「……あぁ」


とりあえず、無口な男前にそれだけ残して、私は教室へと足を進めた。
早足で。


(なんか地味に恥ずかしいな。うん)

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