桜吹雪と葡萄頭
「満田ー!!!起きろー!!」
「っ!?」
朝からガタガタと起こされて気づく。あぁ今日はもう最後の日だったな、と
いつの間にか春になったこの季節にあくびをしながらいつも通りに準備をする
(百虎だってこと隠したまま人間として生活ったって……なんも変わらないんだけどなぁ)
準備も終わって、体育館にいけばもう皆が揃っていて、私が一番最後だったようだ
「姉ちゃん、おせーよ」
「レナレナ!おはよう!」
「あーはいはい、元気な、若いの」
冷慈達がどうするのかはまったく聞いていない。きっともう何も言わなくても自分のことは自分で決めてるだろうから
だから、私は……
「ディディ!!なんだー元気なさげじゃん!」
いつもより少しだけ覇気のない(仮)彼氏にタックルをかましておいた
それだけで、いつも通りさに安心したのか、吹っ切れたのか、マシになったそいつに私が安心をした
「もー驚いちゃったよ、麗菜ちゃんのタックルはいっつもいきなりだからねぇ」
「ははん!彼氏(仮)のくせにいつも当たってくれるとはね!」
「それも愛情でしょー」
「まぁ確かに!」
いつもヘラヘラってしててそれがすごく気に入らなかったのに、不思議なもんだよなぁ、とシミジミ思った
(あ、桜、咲いてる?)
体育館の窓越しに桜が咲いているのが見えて、思わず綻んだ
「あ、卒業式始まるんじゃね?」
「おおう、ルアありがとう〜!」
ルアの声で、意識を引きずり戻され慌てて自分の席に座る。そういえば私等は途中から来てるから入学式とかしてなかったな
だからだろうか、なんだか変に新鮮だ
普段うるさいのが皆真剣な持ち面で椅子に座って並んでると思うと今にも吹き出しそうになっていた
「およそ1年という歳月の中、諸君はワシが命に従い、己をかえりみて成長してくれた。諸君の努力が未来を変えたことに感謝する。今後も世界のため、尽くしてもらいたい。……ワシの口から伝えるべきことは以上だ。今までご苦労だった。諸君の行く道が、幸運に満ちていることを祈っている」
卒業式が始まってゼウスさんのその言葉を聴きながら私が思うことと言えば当然
(あぁ最後に踏んでもらいたいわ)
という相変わらずのことである
なんだかあっという間に気づけば弱みを晒して情けない姿も晒したけど、まぁ、ちょっとは変われただろうから無駄じゃない、と思っておく
(大好きだよ、多分、ずっと)
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