きっと君がいる限り

「……はぁ」


部屋に帰ってから楽譜の束を視界の隅に、ため息しかついていない気がする
せっかく意気込んでいたのにディディのせいで何もかもが手につかなくなった


(あーあーあーあ!くっそ!気色悪いぞ私!)


グシャグシャと自分の頭を掻き毟って勉強机らしきものに顔面を衝突させる
ゴスッという音ともに痛みが走る


(もうすぐ、一年かぁ……)


今になって揺らいだりはしないが、あの優男の顔がどうもチラついていて集中どころではない


「えぇい!!どうにでもなれこなくそ!!」

「うわっ……びっくりした……」


驚く兄さんを無視して、自分の寮を飛び出して、いつぞや行ったはずギリシャ神話どもの寮まで走った

(くっそ、なんで私がこんなことしなきゃいけないんだろうねぇ!?一発殴ってやらぁあの、馬鹿!)

行き場のないこの感情はもう本人にしかぶつける場所もない


「お邪魔しますよ!!!!」

「!?な、なんだお前か……驚かすな」

「レナレナどうしたんだい!?そんなに慌てて」

「葡萄野郎は!あの馬鹿どこ!」

「ディディなら部屋だよ?部屋にいるけど……」


それを聞いてガッと奴の部屋のドアを蹴りこじ開けた
とにかくイライラする。早く顔出せやゴルァ
なんて私はどこのチンピラだ


「!?ちょ、麗菜ちゃん!?」

「ごちゃごちゃ言わんでいいから一発殺らせろ」

「!?え、え、ちょっと待って嬉しいけどいいの?」

「嬉しいってお前はマゾヒストか何かか!!」


なんでか会話が噛み合ってないような気がするので一発鳩尾にいれようとしたらまた、捕まった
なんでそんなやらしいんだおい、禿げろ爆ぜろ


「ちょい、ヤらせろって意味じゃないんだが」

「ほかにナニがあるのさ」

「殺すのほうだよ、ボケ」


グリグリと足を踏みつけてやればやっと離れたので、溜息をつく
痛がってるディディは見てて面白い。正直に言おう。とても面白い

不思議と顔を見て、いつもどおり接しているだけでさっきまでのイライラが収まっていたから、ここはそそくさと帰ろうと思う


「それじゃ、帰る!」

「え?」

「いやいや、帰る!顔見て騒いだらスッキリした!」


(やっぱりこいつといると楽しいな、と思うけど。)

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