減らず口の常連
「はよー」
「あ、麗菜さん!おはようございます」
「いよっす。おはよ〜」
「あ、チャラ・チャラ男。お・は・よ!」
「ぐふっ……ちょ!朝から殴るって!?オレ、仮にも恋人でしょーよ!」
次の日の朝にはもうすっかり俺は元通りで、いつも通りうるさいくらいに騒いでいた
ただ前と違うところがあるとするなら、もう前のように無理をしなくなったところ
「仮にも!だ!」
「もう本当に付き合っちゃってよ!オレ待ってるんだけど!?」
「お黙り!」
なんだか朝からディディがうるさいので、もう一発、鳩尾に綺麗に拳をお見舞いしておいた
あ、くたばった。
恋人なんて、くすぐったい響きの言葉をサラッと言える優男はちょっと痛い目をみるぐらいで丁度いい。
さぁさぁ、今日も私は結衣ちゃんをナンパしよう
「結衣ちゃん、あんなバカは放っておいてさ、今度私とお茶しようよ。おいしいお菓子、あるから!私が作るんじゃないけど!」
「美月さんですよね?って、麗菜さん、今ー……私って……」
「ん?ダメ?俺のがよかった?」
一人称を変えたことに気付いた結衣ちゃんが目を見開いていた
そんなに驚くことだろうか
まぁ、小さい頃は私だったわけだから、変えたというよりも戻しただけなんだけど
未だにくたばっているディディの背によいしょっと腰を下ろせばうぅっなんて呻き声が聞えた
重いってか、後で潰す
「ディディ。……。あー、あげるよ。コレ」
私に潰されているそいつの顔の前にひとつ包みをおいて、そそくさと立ち上がって、何かと気にしてる結衣ちゃんを連れて教室へと先に逃げるように行った
朝からお礼を理由に弁当を作ったなんて死んでも他のやつに言いたくは無い
みづ達にですらバレないように作っておいたというのに
(感謝しろよな、わざわざ頑張ってんだから。いや、感謝しなきゃいけないのは私だったんだけどもね!)
誰が好きこのんであんな奴に恋をしたいうのか
いい奴だし、なんか面白いし、女たらしだし、酒豪っぽいし、葡萄頭だし。
褒めたいのか貶したいのかすらわからない
(あー、好きだ……って俺!!!バカなの!?)
内心で思わず俺と叫んでしまった
きちんとした恋心なんて抱いたことがない分、こういうときにどういう顔をすればいいのかが分からない
「……はぁ」
「ふふ、麗菜さんも素直じゃないんですね」
「……いつだって素直ですけどー。全く失礼だなー近頃の若いのはー」
フニフニと結衣ちゃんの頬を引っ張りながら、わざとらしく怒ってみた
(リメレ風に言うならこの胸のトキメキを掻き消してよ!マイダーリン!って、それ、おかしいのか)
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