完成したのは己
ゆっくりと、震えている私の元へ一歩一歩確実な足取りで向かう
これは俺がしなきゃいけないこと
邪気を払うためとかじゃなくて、しなきゃいけないことだと分かった
「……もう、大丈夫。俺はやっと、縋る場所を見つけたから、戻っといでよ。俺の中に」
優しくそう言って、小さな頃の私を抱きしめれば、途端に、蔦にまわりを囲まれ、閉じ込められてしまった
「おねえ、ちゃんの、なか……?」
「そう。レナちゃんは、俺のなりたかった、俺ができなかったことをしてくれた。もう、充分だよ。ありがとう」
「……うん」
可愛いくてか弱くて、誰かが守ってくれるような、そんな子。
素直で、優しくて、お利口なそんな子。
全部が俺と真逆で、羨ましかった
でも、本当はこの小さな私が俺で、周りに塗り固められたものを、崩せなくなって
我慢ばかりしていたら、いつしか、忘れてしまっていた
「もう、俺は私を失くしたりしない。私がいるから、今、俺は生きてられるんだよね。……ごめんね、お待たせ」
ずっと、待っていたのはれいじでもりこでもなくて、崩れてしまった俺だったんだろう
崩れた俺を修復してくれようと一生懸命だったに違いない
蔦の中、外の声も聞えない、この狭く密閉された空間で、俺は、私を抱いて、涙を流す
おかえり、私。ずっと探してた、本当の自分
「おねえ、ちゃん……もう、だいじょうぶ、だよ…・・・」
ゆっくりと淡い光になる私は、次第に何もかもを白く照らして、俺の中へ吸収されていった
何もかもが埋まったことを感じながら、ゆっくりと目を開けると、蔦も邪気も綺麗さっぱり消えていた
何もかもがいつも通りだった
「……麗菜ちゃん、おかえり」
「ただいま!ディディ!」
「ん。それにしても、可愛い格好だね〜。神化するとこんなになるんだ、麗菜ちゃん」
「え?」
ディディのその言葉と周りの驚きようを見て、自分の服装を確認すれば、中国神話の百虎よろしく白いチャイナドレスを着ていた
最初、神化したときとはまた違う格好
割りとふわりとした白に金の模様をあしらったレースが使われている
「……今までだったらこんなの嫌がってたんだけどなぁ」
(本当はこういう格好も好きだったんだ、私)
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