辿り着いた恐怖の世界
「……あ、あれ……」
皆でその森へと急いで向かったとき、蔦があの子を縛り付けるように巻きついていた
その代わりに少しづつ邪気が薄れてはいるけど
薄れてはいるけど
「……」
「麗菜ちゃん!?」
「……大丈夫」
ゆっくりとその蔦に近づいて行けば上空から、俺を叩きつけたかったのか、はたまたは近寄らせたくなかったのか蔦のひとつが俺にめがけて振ってきた
「大丈夫。俺が助けてあげるね」
そう小さく呟けばその蔦は俺を引っつかんで、私のいるところに放り込んだ
痛い。蔦って植物のくせに。馬鹿力なんだろうか
そら子供な私には泣き叫ぶぐらい痛かっただろう
「レナちゃん……もう、大丈夫だよ」
「っう、いた、いたいの……これ、痛いの……」
必死になって蔦をどけようとしても堅く巻きついたそれはびくともしなかった
痛いよね。ごめんね。
「うん、痛いね。すぐにどけたげるから」
そうは言ってもどうやってこの蔦から出してあげればいいかすらわからない
そんなことをしていると足のほうを細い蔦が張って上へ上へとやってくる
くそ、俺まで捕まってたまるか。絶対嫌だから、こんなとこで負けるなんて
「……離れろよ、腐れろ」
その腹のそこから出したような低くドスの利いた声を出したとき、その蔦がスパッと切れていた
「麗菜さん!大丈夫ですか!?」
「結衣ちゃん!?どうやってここまで……!」
俺は蔦に連れてこられたようなもんだからこんな高い位置にいるけど結衣ちゃんはどうも、浮いている
これ、下からパンツ見えるんじゃないんですか。男共すぐさまそこと場所変わってくれ
「冷慈さんが、風で運んでくれてるんです。それよりも、私にもお手伝いさせてください」
「……うん、お願い。俺、そんな刃物も持ってないしね」
結衣ちゃんが何か剣のようなものを持っていたので、ここは素直にお願いしようと思う
俺じゃ太刀打ちできなかったから
それから結衣ちゃんが次から次へと蔦を切り落としてくれるけど、どこから生えてきているのか謎になるぐらいに、蔦の数は減らなかった
「チッ……!拉致があかない!結衣ちゃん!戻りなよ!」
「嫌です!!私ならまだ、大丈夫ですから!」
「拉致があかないから言ってるの!戻りなさい!」
「嫌です!絶対に!」
あぁ、可愛い妹が俺のためにわがままを言っている。
これは、姉として動いてあげよう
(ありがとう。結衣ちゃん)
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