被害者と自身
あれから、トイレに行くからという理由をつけて、俺は女子トイレの窓から、校舎を抜け出した
一人で行くと言えば全員が止めるのはわかってるし、ディディが許してくれないのも当然わかってる
(あの葡萄野郎だから……時間の問題だなぁ)
きっと、あまりに遅いからってすぐにバレてしまうのは目に見えているけれど
それでも、親の言ったとおり、俺が蹴りをつけなければいけない。これは俺のことだから
「……っ、は、ぁ……」
森の中に入って、深呼吸をして、驚いた。空気が悪い。好きじゃない。
前まではこんなんじゃなかったのに。薄気味悪くても、箱庭って感じのあの空気だった
「レナちゃん!どこ!?」
「おねえちゃん!」
名前を呼べばもう一人の私はあっさりと姿を現した。最初にあった時と同じ、小さいままの私がそこには泣き腫らした顔でいた
「大丈夫。大丈夫だから」
「……でも、おねえちゃん……来ちゃだめなのに……」
「え?な、なんで……」
「いやぁああ!!!!」
「!?」
いきなり私が喚きだした。驚いて離れれば、私が何か蔦のような植物にズルズルと引きずられていく
嘘、何、あれ。
「…………っ!?」
「おねえちゃ、ん……おねえちゃんにげて……!」
その子がそう呟いた瞬間、辺りに閃光がはしって、思わず目を閉じる
ゆっくりと目を徐々に開けていくと、目の前には百虎が姿を現していた
「百虎……?ちょっ!?」
百虎は俺の存在を見つけるとすぐに俺を背に乗せ、その場から逃げ出した
背後で、聞える悲痛の叫び声に俺は後悔を覚えた
もっと早く、助けるべきだった、と
(これじゃあ今以上に"私"が崩れていく)
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