悩み悩み空回る

機能を停止したその頭で俺は気づけば音楽室まで歩いてきていた。
あぁ、なんでこうなってしまったんだろう。引鉄といっても、思い当たるのなんてあの子に出会ったことしかないというのに。


「っ、おれ、何したの……?また、ダメな子になんの……?」


膝から崩れ落ちて、侵食してくる恐怖から逃げるように震える自分自身を抑える
誰もいなくてよかった。こんな弱いだけの姿は誰も想像もしてもないだろうし、できないだろう。



「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……!」


トチ狂ったようにひたすら誰に謝るわけでもなく、言い続ける。
もう嫌だ。こんなこんな苦しいだけの我慢だけの、操られに行くだけの見返りももらえない人生なんてー……

教室の角で、壁のほうを向いてしゃがみこんで、耳を塞ぐ。
もう何も聞きたくない。俺を刺激するだけの世界なんて、見たくも聞きたくもない



「−−−−」


現実から逃げ出そうとしたとき、何かを言われて、腕を引っ張られた
おかげで、全てが目に映る

目の前にせっぱづまった顔でいるディディが。綺麗な葡萄のような髪色も、エメラルドグリーンみたいな目も


「麗菜ちゃん!オレ、わかる!?」

「……それぐらい、わかる……」


聞かれたその質問に驚いてしまった。切羽妻ってるからってそんな質問……俺、ボケたわけじゃないんだけど


「よかった……っ」

「苦しいってば……」


きつく抱きしめられて、思い出す。あぁ、俺には縋る所があったのに。
気が動転しすぎて、すっかり忘れていた


「心配、しすぎだよ」

「嘘。じゃあそんなに震えないでしょ」

「……。武者震いだっての」


(そうだ、これは俺の問題で、こんな優しさに溢れてる人を巻き込むわけにはいかない)

そういった俺の精一杯の強がりは、見るも無様な可哀想なもの
そんなことは分かってる。でもー……


今、もらった安心と優しさがあれば、俺はきっとー……


(一人でも、きっと、もう大丈夫)



決意を固めて、見据えるのはあの"私のいる森

そこに行けばきっと全てが終わる。
大丈夫。うまくいく。うまくしてみせる
今まで他人の望むように器用に動いてきた私にできないわけが、ない



(だから、ディディ。もう俺を甘やかす必要は、ないよ)

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