誰もいない音楽室
「…………。まじだ、俺の声だ……」
放課後にクラスメイトでゾロゾロと音楽室にいけばどこからかは分からないけど、俺の声がする。
喋っているわけでもなく、歌っている。ただし、音が小さくて何を歌っているのかはイマイチわからない。
「おいおい!ほんとに誰もいねぇじゃねぇかよ!」
「ぁああああああ!!!!くそ!帰ろうぜ!?」
「冷慈、恐いんだ?」
「ばっ!バカ言うなよ!んなわけ……!」
「……わっ」
「あああああああ!!!!!!!!」
どうやら弟がからかわれているようだ。彩詞と宋壬に。
哀詞にいたっては興味もなさそうに壁にもたれかかっている。
「あーちゃん!」
「!!」
「……アレェ?もしかしてェ」
「黙れバカロキ」
……前言撤回どうやら哀詞もビビっているようです
全員がこの不可思議な事件に困惑しているとき、ふと思い出した
「……あの子……」
「へ?麗菜ちゃん!?」
そういえば、ずっと会いに行っていない。私に。
同じ声の奴なんて、あの子しか知らない。
歌い方まで、俺と同じだからきっとそう
そう確信をもって、俺は一人走り出していた
(寂しいに決まってる。俺何してたんだろう)
「麗菜ちゃん!ストップ!」
ガシッと校舎を出る寸でのところで後ろから追いかけてきていたらしいディディに腕を捕まれて、行くことを阻止されてしまった
「ちょ、離してってば!!一人なんだよ!あの子!!」
「わかるけど!行くとまた、あぁなるっしょ!?」
「!!」
ハッとする。そうだ、行けばきっとまた、あの子をマトモにしようと俺は俺をあの子にあげてしまう。
(……どうすれば……。あの子が俺を呼んでるのに)
(夢中になっている間にその森が黒く不気味になっていってることを知るのはただ一人)
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