珍獣と遭遇
「…………ここ、どこ?」
ある日の仕事の帰り道、人通りが少ないという理由で路地裏を通って帰っていると途中に見慣れない綺麗でアンティークなドアを見つけた
どう考えてもこんなところにこんなドアがあるほうがおかしい
そう思って素通りをしようかと迷った。が、好奇心には勝てずに、恐る恐るドアへと手をかける
開けようと、した時だった
「満田、何してんの?」
「麗菜ちゃん……?」
「あ、ほんとだ。何してんだ、お前」
幼馴染が3人、後ろにいた。なんだ丁度こいつらも帰りだったのか。と思って事情を説明すれば、3人ともが俺と同じように好奇心に駆られたようで、美月とルアが迷いなくそのドアを開けてしまった
「え、ちょ、おいおいまじでか」
開けたことに、驚いたのもつかの間でドアの向こうには綺麗な草原が広がっている。え、いや、これはなんなんでしょう。
ドアを開けた2人は早々にその草原に驚き走り回っていた
「麗菜ちゃん、行ってみよう……」
「あぁ……兄さんも好きそうだもんね……」
(まぁ……すぐに戻ってくれば……)
兄さんと俺が呼ぶのは小柚希という綺麗な女子の幼馴染。なんというか顔だけ見ればV系の似合いそうな雰囲気の美人という言葉よりも、美しいというちゃんとした表現の似合う人
同性とはいえうっかり惚れてしまいそうだ
スレンダーってすげぇ、美しいってすげぇ
そんなことを思いながらも兄さんと一歩足を踏み入れる
「う、わ……っ、空、綺麗……」
「…………わ……凄い」
2人してその景色に見惚れているとき後ろでバタンと戸の閉まる音がして、まさかと思って振り返れる
「……!?ドアは!?」
今のこの瞬時の間に戸は閉まりその存在を消していた
俺のデカイ声に
3人も驚いたようにこっちを見る
これは……閉じ込められたフラグ?
い、いやいや!ドアが消失するっておかしいでしょうが!と一人で内心で慌てふためいてみるもドアがまた出てくるという可能性だけは限りなく低そうだ
「……えーい!しゃーない、なるようになる!」
「おー流石満田ー!」
「よっ!男前女子!」
グッと拳を握って、湧き上がる好奇心にだけ身を任せることにした
ここがあまりにも綺麗だから、探索してみようと思っただけなんだけど。
ルアと美月が盛り上がる中兄さんが何故か拍手をしている
なんだこのギャグ感。……すいません、いつもどおりでした
「とにかく、歩いてみないとな……」
「だなー。頼むよー、自動方位磁石」
「おい、なんだよそのあだ名。やめてけろ」
美月からつけられたよくわからんそのあだ名は無視して、スタスタと歩き出す。目指すは右方向。多分、なんかありそうだから。という勘だけを頼りに歩いていく
だいたいこういうときの俺の勘は外れない
勘を頼りに歩いていくと、森にはいって、ガサっという音がして飛び上った
別に恐いというわけではない。断じて違う。驚いただけなんだ
「な、なんだぁ!!いるなら出てきやがってんだぁああ!!」
「あっはっはっは!めっちゃビビってるこいつ!」
「だまれみづ!びびってなど……!ひぃいい!!」
俺のリアクションを見て笑う3人ときっと今の俺は顔面蒼白なんだろう
3人の後ろから出てきたのは、現実では特定の場所に行かなければ、出会わない。おまけにちゃんと隔ててあるところから見る実に危ないはずの肉食獣
……そう、虎だ。おまけに白い方の
「……ろ、う、うし、うあああああ!!!!!ごめんなさぁあああああああああい!!!!!」
震えながら後ろの虎を指差せば、虎と俺の目が合った。その瞬間俺は何を思ったか死んだフリもせずに謝罪をしながら全力疾走をした
「「うおぉ!?」」
「わ……!!」
後ろから3人も走ってきてはいるようだが生憎待てない。恐すぎるだろなんだアレは。というか本当にここどこだよ!と泣きそうになる
不安からという可愛いものではない。あのギャグマンガでよくある「ぎゃあああああ!」と叫びながら泣いて逃げるあの描写そのものだと思う
ばっと森を抜けると地面が揺らいで、ゲリラ豪雨なんじゃなかろうかと思うほどの雨が降ってくる
「もーああああああああああ!!!!なんだよぉおお!!死にたくねぇええ!!!!」
完全にパニックに陥りギャアギャアと一人騒ぐ。1分ぐらい騒いだところで、雨も地震もぴたりと止まった
「……ひぃっ……こえぇえ……なんだここっ!」
俺がそう言ったとき、後ろにいたはずの美月の声が上空から聞こえた
「おーい!満田!」
「え……上?」
上を向けばうるさいルアと美月が本でしか見たことのない生物に乗っていた
あれは……確か朱雀と青龍……
「はああああああああ!?いやいや!何だ!!」
兄さんはといえば、後ろのほうで玄武に乗ってもう寝ていた
おい、こらどういうことだ。説明プリーズミーだ
完全に戸惑いつくしていると俺の体が何かに押し上げられてふわりと浮かんだ
「!?」
ボスっと真っ白いどこかにおちる。なんか……こう……感触が……
そう思って少し視野を広げて唖然とした
俺、どうして虎に乗ってるんだ、おいこら
「え、え、ちょー!うわぁあああああああああああああ!!!!!!」
俺が理解する間もなくその虎はどこかへと走り出した
(一体何があったのか俺にもさっぱり分からない)
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