仮恋人の契り
「……」
「え、怒ってる?」
「怒ってる」
一通り泣き腫らしてからそのまま身を預けていたら、ディディがこのまま付き合っちゃおうかなんて抜かしやがったので、俺は絶賛不機嫌である
大体まだ好きとか言ってないし。はい、先走った乙。
「でも、そっちの方がいいと思わない?麗菜ちゃんが無理したらすぐ駆けつけれるでしょ」
「……しないってば。もう。疲れたから」
「ほんと〜?」
「あー!!ホント!ホント!」
「麗菜ちゃん知ってる?人間って2回言った時は嘘なんだよ〜?」
「そんないらん知識どこで入手しやがった!!」
疲れたのは本当。でも、きっと俺のことだから、また同じ事を繰り返す。現に内心はディディの助けは必要ないと思っている。
でも、どうやらそれすらもうバレているようで、逃がしてくれそうもない
「あ、それならさ、仮恋人ってのになろうよ」
「仮なのな。それなら百歩譲って認めよう」
「百歩も譲るの!?」
「なんだよ、文句あるなら千歩譲るぞ」
「あ、いや今のままでいいです……。って、オレはてっきり「文句あるならやめる」って言われるかと思ってたんだけど……」
それは言おうとも思ってなかった。結局、あの心地よさには負けたんだろう
別に、いい。仮ぐらいなら。
嫌いじゃないから。この暖かさがあると落ち着くから
(好き、なんだろうなぁ。まぁ、当分はお試し期間かな)
そんなことを思いながら、奴に身をあずけた状態で、泣き腫らしたせいか、睡魔が地味に襲ってくる
これはよろしくない。
「ねぇ、麗菜ちゃん」
「んー」
「あのさ、オレと約束、してくれない?」
「やくそく?」
「そ。何かあったら、なくても、オレが近くにいるときはオレに頼るってこと」
「んー。わかっ、た…………」
「え?……おーい?麗菜ちゃーん?……参ったな、寝ちゃってる……」
(でも、約束はしてくれたし、一段落ついたって感じ、かな)
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