人格破綻者

あれから何日かがたつけど、なんだかこっそり監視されてしまっているようで、あの子に会いに行くことができずにいた


「麗菜ちゃーん、今からオレとデートしない?」

「あ、ディディ。……デートって」


ほんの少しだけその単語に動揺をして、固まった間にもう手を引かれて、外へ連れ出されていた

あぁずるいな。コイツ。いくらいつも通り振舞っていたって内心は弱ってるときにいつも以上に優しいとか


「ちょ、どこ行くんだよ……」

「まぁまぁ行ってみれば分かるって!」


大人しくついていくしかないのは理解したから手を離してほしい
そうじゃないと変に意識してしまう
そんなことをいくら心の中で唱えたって言葉に出したわけじゃないから、離れることはないんだけど

ほんの少しだけ、心地いいと思ってしまったから


「な、なぁ、どこ行くのよ?教えてってば」

「ビニールハウス!」

「へ?」


着いた先は本当にただのビニールハウスだった。
中には、たくさん葡萄が育っている


「わっ……すげ……」

「でしょ〜。こっちこっち」


ディディについていけば、綺麗に実をつけた葡萄がなっていた


「な、なんだ美味しそうじゃないですか……!」

「やっぱり好きなんだ?葡萄」

「葡萄ってか……果物はメロンと無花果っての以外は全部好き」


そんなことを言っていると綺麗なそれをディディが取って、差し出してくれる
貰ってもいいってことだろうか


「はい、オレ栽培の腕は確かだから、安心して食べていいよ〜」

「……。え!?ディディが育てたの!?」

「うん?って今更!?」

「あらぁー。おばちゃん驚いた。うん、食べる」


一粒食べて、また驚いた。美味しい。
あぁ、これ美味しいな。ジャムとかにしたらいいかもしれない。甘くて新鮮で。
皮ごと煮つめてジャムにしちゃおうかな
あぁでもとりあえずこの一房は全部このまま食べようっと


「あのはーりりー」

「うん、食べ終わってから話しなよ〜」

「……あのさ、ディディ。これ、2房くらい貰ってもいい?」

「もちろん。いいよ〜好きなだけどうぞ、オヒメサマ」

「オヒメサマってガラじゃないわー。どっちかっていうと悪女がお似合いじゃない?」

「え、自分で言っちゃう?」


ディディのツッコミに思わず吹き出して笑ってしまった
2人して、笑ってる。こういう空間は嫌いじゃない。
ディディはこんななのに、俺の嫌いな空間も雰囲気も言葉も出さない。
最初はあんなに腹のたつ奴だったのに


「……あ、日が傾いてるなー」

「……今日も、行けなかったな」


日が傾いてると聞いて、つい呟いてしまってハッとした
そうだ、俺今、毎日監視されてるんじゃんね
そんな奴がこんなこと言っていいものか。絶対怒りそうだ

そう思ってヒヤヒヤしながら焦っていれば、ディディは何も言わずに、笑い出した


「あはは、そんなに行きたい?」

「え、え?い、いやそりゃ……。行きたいけど……なんで笑われてんの?俺」

「あぁゴメンね。あまりにも"しまった!"って感じの顔してるからさ〜ついね」


なるほど、顔に出てしまっていた、ということらしい。
仕方ないだろ。本当に怒られるんじゃないかって思ってたんだから


「あのさぁ、麗菜ちゃんはどうしてあの子に会いに行きたいの?今、オレといるときも楽しそうだったよ?」

「……。どうしてって……」

「あ、いや、悪い意味で聞いてるわけじゃないよ?いい意味で。教えてほしいなって思ってさ。もちろん、誰にも言わないよ」


まるで子供にでも聞くかのようにディディが優しく俺に問いかけた


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