泣き叫び損ねた
「麗菜さん!!今日は行かないでください!!」
「……なんでよ。結衣ちゃんどいて」
なんでなのか、いよいよ、放課後になると、クラスメイトにあの子のところに行くのを妨害されだした
「おかしいです!!あんなに明るかった麗菜さんがそんなになるなんて……!」
「姉ちゃん、いい加減にしろよ」
「なんで?誰にあってようが俺の勝手じゃん。どいてよ」
最近、あの子が少しづつ今の俺に近くなっている
背が伸びて、言葉もしっかりして
でも、俺とは真逆の女の子で
「麗菜ちゃん、オレも流石にもう黙ってられないよ?どう見てもあの子、麗菜ちゃんを利用して、外に出ようとしてるだけじゃー……」
「違う。俺はー……俺がただ、あの子を外に出したいだけで。俺みたいになってほしくなくて、それで」
そう、それは俺の最大の自己満足。
あの子が俺が本当になりたかった私になっていくことで、こんな矛盾だらけな複雑な思考からも開放されるんじゃないんだろうかって
そんなわけもないことも理解しているのに
「いい加減にしろよ!お前!」
バシンと乾いた音と素晴らしいぐらいの痛みが俺の右頬を襲った
叩いてきたのが女子とかだったらまだよかったのに、よりによって、ルアに殴られたせいで、軽く吹っ飛んだ
「っ」
「お人よしなのか、逃げたいだけなのか知んねぇけどな、独りよがりも大概にしとけよ!」
いつものキレた表情で、俺の胸倉をつかみあげるルアは迫力抜群だった
その後ろで、慌てたような焦った表情を浮かべているディディが視界に入る
あぁ、そうだ。ここの奴等はこんな私を望んでいるわけじゃなかった。
あの底抜けた馬鹿でふざけてる俺しか知らないから、こんなになった私は嫌いなんだった
ナニをしてるんだろう。
俺はいつだって、周りの望んでる自分を作らなければいけなかったというのに。
「……。ごめん、まさか殴られるとも思って無かったわー」
「!!」
「ただいま、お前等」
そういつもの調子で言えば、皆が安心したように、息をついた
あぁそうだ。いつだって俺は周りの期待に答えなきゃいけないんだ
嗚呼肩の荷が重い。責任がのしかかる。
しっかりしないと。そうじゃないとまた、"何もしてないのに、怒られる"んだった
あぁ、やだやだ。望んでばかりで、俺には何もくれない。
いつも皆の望む俺を作ってあげてるんだから、お前等も、俺に何か頂戴よ。
(エゴに染まっている俺の脳内は崩壊しそうになって、警告音を発しているのに誰も気づいてはくれない)
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