魅入られたのは

「麗菜ちゃん、今日も行く?」

「ん。行くけど、ディディも行くかー?」

「あぁ、行こうかな。気になるしね」


俺は最近、よく心配をされるようになっていた。
毎日を騒ぎもせずに、あの子のいる方だけをただじっと見て放課後になればお決まりでディディとその方へ足を進めるばかり


「ほんとになんかとりつかれてんじゃ……」

「いや、満田に限って……てかここ箱庭じゃん」

「あ、そうか」


そんな声は聞えているけど、聞えていないフリをして、スタスタと足を進める
一人であんなところにいるんだから、早く行かないと


(……麗菜ちゃん、どんどん悪化してる気がするなぁ)


「麗菜ちゃん、大丈夫?」

「何が?大丈夫だけど」


ディディが真顔で聞いてくる。一体に何に対しての大丈夫?なのかはわからないけど
心配はいらない。
だって、俺は"お利口さん"だから


(ねぇ、いい子でしょ?あんな小さい子のことを心配して動いてるなんて)


そんなことを頭の片隅で思った自分に吐き気を覚えた
これじゃあ、俺の嫌いな"かまってちゃん女子"と少しも変わらない


そうじゃない。俺がなりたいのはそうじゃないのに


「……。ディディ、人間ってめんどくさいね」

「え?」

「……。あー面白い」

「…………」


自分でも恐ろしいほどに口元が釣りあがったのがわかる
あぁ俺の人間らしさがゆっくりと壊されていってる?

あの子にあうたびに、一つ、一つ落としていってるのかもしれない


「ね、早く行こう?」

「あ、あぁ……」


(前に見た、笑顔とは違うその顔はオレは好きじゃないよ)

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