タイミングを逃しつづける
学園長室に駆け込もうとすれば、あのデカイドアは施錠されているのかビクリとも動かなかった
大急ぎで聞きたいことがあるのに
「くっそ!閉まってるし……講堂に行ってんのかね……」
今の心当たりなんて講堂くらいしかない
この時間だと丁度合唱コンクールが始まるか始まらないかくらいの時間だ
(また、走んのかよ!)
廊下は走っちゃいけませんという規則はガン無視をして、また走り出す
あの子を、私をどうにかしなきゃ
「っ、あぁ、くっそ、人、おお、い…っ」
講堂についたのはいいものの、全校生徒の集まるそこは人だらけでどこに誰がいるかすら把握できない
こんな状況でゼウスさんを見つけることができるんだろうか
そう思っていたときだった
「麗菜ちゃん!?」
「あー!レナレナ!よかった、本当によかったよ!」
「テメーどこフラついてやがったんだ!探させんなよ!……冷慈さんに頼まれたから探してやったけどどこにもいねぇし!」
「姉ちゃん、どこで何しっ」
ディディやらアポロンやら弟信者なターたんをどけて、喋っていた弟の肩をわし掴みにする
まだ落ち着かない呼吸もすることを忘れる勢いで、問い詰めていた
「ゼウス……ゼウスさん、どこ……!!」
「は、はぁ!?俺たちが知るわけねぇだろ……!って、姉ちゃん……それ……」
食ってかかろうとする俺の鎖骨を冷慈が驚いたように指をさす
クラスメイトもこぞって、冷慈の指の先を見てくる
自分じゃ、鎖骨のところは見えないので、いったい何があるのか、と疑問が沸く
「麗菜ちゃん!どこで怪我してきたの!?そんなとこ!」
「ちょ、まっ……!はぁ……はぁ……怪我、してんの?」
「まだ血、出てる……」
「まじか……いつ切ったんだろう」
なんだか心配性なのか、ディディが若干うるさいけど、宋壬いわく、まだ血が出ているらしい
全然気付かなかった
「まぁ怪我はいいや、それよりさ……」
そこまで言ったとき、アナウンスが流れて偶然にも次は1-Aの出番だった
無理をしないようにと念を押されながら、舞台へと連れ出されてしまった
こんなことをしてる場合じゃないのに
でも、さっき終わるまで待っててって言ったし、大丈夫かな
俺だから、我慢することに、慣れてるから。
そんなことを思って、一旦思考を切り替えて例の合唱コンクールを張り切らねば。
(必死こいてやったんだから、当然、結果なんて金賞でしょ)
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