練習もほどほどに
「あー、きっちぃ……厳しいんだよ、冷慈さんの姉貴」
「おうおう、なんだぁ?弟信者。文句あんならあと一時間……」
「姉ちゃん、尊イジめんなよ」
「冷慈さん……っ!」
「……リアルホm」
「黙れ」
何日かたって、結構真面目に全員で練習をしているここ最近
まぁなんだかんだ楽しそうなので良しとしよう
「とりあえず、お疲れー帰って良いよー」
俺がそう言えば不良面の奴等を筆頭にぞろぞろと皆が帰っていく
誰もいなくなった教室に残って、俺は自席でくたばっていた
こう、リーダーシップをとっていると、どんどんストレスが蓄積されてしまうわけで
でも、それを他人に当ててどうするんだ。っていう話なわけで
「……」
気分によってクルクル変わる俺の心情だから、きっとこれも一時的なものに過ぎないんだろうけど、無性に辛く感じた
「……」
「あれ?麗菜ちゃん、帰らないの?」
「あ、……っと、ディディ、だっけ」
「あー、まぁ、そうも言われてるかなぁ〜。アポロン限定だけどね」
「じゃあディディでいいや。そういうディディは帰んないの?」
「いや、帰るつもりだったんだけど忘れものしちゃってー」
そう言いながら、自分の制服のジャケットをとって、ヘラヘラと笑っている
あぁ、いつも通りだなこいつ
へーと適当に返事をして、また机につっ伏した
色々と疲れたなぁとイライした思考を沈めるように目を閉じる
「……お疲れさま」
そう優しい声で言われて、肩に何かあったかいのがかけられて、足音が遠ざかっていった
完全に教室から出て行ったのを確認してから顔をあげると、肩にさっき、取りにきていたジャケットがかけられていた
「……もー、めんどくさい。返しにいかなきゃじゃんよー。……お疲れさまじゃねぇよボケ。優男、死ねばいいのにー。あーもーなんだー……」
こういうことに免疫がないわけではない。これでも高校時代は多分世で言うリア充をしてたほうだから
ただ、そのときは、わざと、だったわけで
いわゆる、悪い女だったわけで。
掌で踊らされてるフリをして実は掌で彼氏転がしてました的な
「……不意打ちとか慣れてないんだっつの。うわ、もう気色悪い俺」
なんでか照れた自分が気持ち悪くて机に頭突きをする
あー痛い。…・・・机、へこんでないよな?俺、石頭だったわ、すっかり忘れてた
今までは"気づかせてた"のに、今は"気づかれた"
この差は大きいぞ、俺。
「……いつ、返せばいいんだっけこういうの」
自分が転がしていたときなら明日に返してただろう。
ごめんね、ありがとうって言いながら
(いや、今走っていけば間に合うか?……いやいや、今から走っていってどうする……)
ストレスとかよりも、もうこの上着のせいで迷いが半端ではなくなった
ひとまず、やっぱりいつも通り、明日、ごめんねありがとうって言いながら返そう。
転がされてるみたいで癪に障る。
そう思いながら、そいつのそれにそっと腕を通して上から着てみて驚く
「うお、デッカイ……。はぁ、男っていいなー。はー女とかマジめんどくさい……。ドロドロだぜよ」
(私のはドロドロなんじゃなくて"人格破綻者"なだけだから)
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