Prologue


人間なんて非情でエゴだらけの生き物だと常に思う


「おじょーもふもふー」

「みー、ほんと、猫好きなぁ」

「そういうお前は動物嫌いだよな」

「えー、別に嫌いじゃねぇわ!……哀れだなぁって思うけどさぁ」


例えば、癒しだのなんだの理由をつけて動物を飼育する。これこそ分かりやすい人間のエゴでしかない
本来動物なんて人に飼われるものじゃない。ましてやペットが家族だなんてとんでもない思い込みだ

これだから人間は見てて飽きない。俺だって人間ではあれど、この思考だけは生まれたときから変わらない


「麗菜ー。親父さん呼んでるぞー」

「ルア!来てたのかよー。へいへい。ありがとうー」


生まれたときから一緒な幼馴染が俺を呼びに来る。家族同然の存在がきっと唯一俺に反論をしてこない奴

(結局は俺が一番のエゴイストなんじゃなかろうか……)

嗚呼、こんな世の中、馬鹿馬鹿しい。欲に塗れるから、他人を蹴落とし殺し悦に浸り……
くだらない上下関係に怯えながら生きていく羽目になるなら、一人でも自分の意思を貫き通せばいい


「−が、−で可哀想だよねぇ」

「確かに……最近は物騒だし」


友人が2人、何か話をしている。中学からの幼馴染で、仲はいい。でも俺みたいにどうしようもないことを深く考え込む体質ではないようで、いつも考えの浅い発言をする
巻き込まれていくのは俺だというのに
最終的に、意見をまとめて元の輪へ戻すのも俺だというのに

(可哀想なのは、その言葉を意味なく使ってる奴なんじゃないのか)

そこまで思って、こんなことを思っていたら俺もエゴだらけの人間なんじゃないかという思考に陥り、考えることを止めた


(俺がおかしいのか、それとも周りがおかしいのか……)


考えばわかるだろうに。どっちが正しいかなんて。
こんな薄汚れた便利になりすぎた欲だけを追い求める世界じゃ何も見出せない


(もっと、大事なことがあるだろうに。命があるだけ感謝しろよ。グズ共)


思ったことは全て飲み込んだ。俺は遠慮がないとよく言われるけど実際は言いたくても言ってないことが7割を占めている
言っても仕方が無いことは言うだけ無駄なんだ


「お前は、何回言ってもわからんな、冷慈と莉子ですら2回くらい言えばわかるんだぞ。おい聞いてんのか」


お父さんの声で現実に引き戻される
あぁ、そうだまた怒られてるんだっけ。


「はい、すいません」

「謝ったら同じ事を繰り返すな」

「はい」


昔からよく怒られてきた。多分弟や妹よりも手のかかる奴だと自分でも思う
怒られては弟や妹のように反抗をするわけでもなく、ただうなずいて謝るだけ
自分が悪くなくても、ただ謝る
反論をしてもそれは言い訳にしかすぎないから


(言い訳するぐらいなら俺が悪者になる方が楽だ)


例えそれが、どんなに自分が悪くないことであろうとも、攻められているということは俺が何かしらしたから、であるんだから


(こういう声も、嫌いだけど怒鳴り声じゃなくて助かったかな)



(人間ってどうして思い通りにいかないとすぐにキレるんだろう。ほんと、えぐいと言うか……)


(エゴの塊だね、人間って)

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