自己肯定の定義


「自分自身を、大事にする……って当たり前なんじゃないの?本で読んだけど……人間は自分が一番かわいいんだって」

「チッチッチ、それとは違うんだなぁ」


突きつけていた人差し指を、自分の顔の近くまで戻して、チッチッチと指を振る
そら人間は誰だって自分がかわいいもんさ。そこは間違いじゃないけども
それは自己肯定とはいえない

弱い、弱い人間の逃げる術でしかない



「自分自身を大事にできる人は強い人。自分が一番かわいい人は弱い人。こんなに差があんのよ」

「……どう違うわけ?なんか難しい話してるよね?」

「そう?じゃあこうしようか、あるところに、AちゃんとBちゃんがいました。と」


Aちゃんはどこにでもいる普通の容姿で化粧っ気もない、可愛いわけでもかっこいいわけでもない。でも、それでもどうしてか、いつも胸をはって人目なんて気にせずに歩いている

Bちゃんはよくいる普通のお洒落が好きな可愛い子。化粧でできあがった可愛い顔と可愛い見た目は周りの友達と対して区別がつかない、流行り廃りに詳しい子。だからなのか、いつも人の目を気にしている




「さぁ、君はどっちが好きかな?見た目は別に飾りっけもなくて、性格もどちらかといえば可愛いわけでもない子と見た目はちゃんと女子らしくて、性格も女の子らしい子」

「えー、それは当然、女の子らしいほうでしょ」

「そう言うと思ったよ、じゃあこういう補足がついたらどうする?」


Aちゃんは、性格も普通で可愛いわけでもない。でも、他人のことを何も言わない。他人と自分は違うものだと割り切っている

Bちゃんは、その逆で可愛い性格もしている。だけど、平然と自分より可愛くない子を自分の引き立て役に使っているような子


俺なら、迷わずにAの子を選ぶ
Bポジの子ってロクな子がいないことを知っているから



「なんか……難しいよねそう言われると」

「難しくなんかないでしょ。自分がどっちがいいか、だからね」


俺が聞きたいのは、葡萄頭の"本音"であって、俺に同調する姿ではない
だいたい仲良くなってもいいかな、と思った相手にはこの質問をいつもする
本音が話せる相手でないと仲良くなれない


「俺は、見た目も可愛くて悪口とか言わない子がいいかなぁ」

(きた!)


実際問題そんな完璧な女子はいないだろうが、それがコイツの本音なのは声のトーンでわかった


「なるほどなー、いいなそういう子、いたら!」

「すぐ落としにかかるんだけどなぁ」

「落としってお前……」

「んで、麗菜ちゃんは、どっちなの?」

「へ?」


まさか質問を自分に返されると思っていなくて、思わず間抜けた声になる
正直に言おう、俺はAちゃんみたいな方が絶対にいいと思っている
でも、俺自身は、そうじゃない
そんな人間じゃない


「……そうだな……どっちでも、ないな!!」

「え?」

「見た目も別にまぁそこそこって言われるし、自分でもこの顔は嫌いじゃない。何より親からもらったもんにケチなんかつけてたら贅沢だし。ただ、よく言われるよ。最低な性格だねってさ。でも、その最低な性格が好きなんだけど」


(これぞ究極系変人女子)

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