近くにいれば変わっていく

「なぁーに、してんの〜?楽しそうだね」

「あ」


寝転がった俺の視界に、葡萄色の髪の毛に綺麗な緑色の目が飛び込んでくる
あいつだ、そう無駄な勝負を吹っかけてきた馬鹿
くそ、関わらないようにここまで遊びに来たというのに


「遊んでるんだから、楽しいに決まってるだろ」

「1人で?寂しくない?」

「別に。むしろ気が楽。干渉されなくて済むしね」


他人に自分のことを指摘されるのは好きじゃない。たとえそれがどれだけ気の知れた大好きな友人であろうとも
決して冗談でも他人を否定するような言葉は吐いてはいけない
まぁ、どうしてものときは仕方ないのかもしれないけど


「…………アンタも寝転んでみれば?案外幸せだよ」

「寝転んで幸せって……単純なんだね〜」


そう言いながらも俺の横に腰を下ろす。関わらないようにするつもりが自分から誘ってしまった
何をしてるんだ僕。しっかりしたまえ
いや、しかし誘ったのに自分がいなくなるのはどう考えてもおかしい。これは多少我慢しなければ


「単純で結構!人生なんていつ終わるかわかんねぇんだし、楽しんだ者勝ちだからな!」


楽しめば、その分死ぬときに後悔は少ないんじゃないだろうか
出来るなら、幸せいっぱいで死にたい。人間なんていつどこで死ぬかわかったもんじゃないんだから
そうは思うものの、本心はずっと子供のままで、楽しいままで時が止まってしまえばいいのに。と思っている
言葉と気持ちが矛盾してることは分かってはいるけど、どっちも間違ってはいないはずだ


「……そうかも、知れないね」

「はは、そんなに真剣に考え込んでる答えが返ってくるとは思わなかったや。もしかして意外といい奴?」

「あれ〜?今更気づいたの?遅いなぁ〜麗菜ちゃん」

「俺、他人のこと見る目ないらしいからねぇ」


ケラケラと笑えば、驚いたような顔で俺の方を見ているそいつ
なんだよ、笑っちゃいけないのか、ボケめ


「なんだよ、俺の顔驚くほど、崩壊してた?」


顔面をペタペタ触ったり、みょーんと引っ張って確認をとる
どう考えても今のこの顔の方が崩壊してんぞ、絶対


「あ、いや……そうじゃないんだけどね。そろそろオレは教室に戻ろうかな」

「あーそう。じゃあね。……なんだっけ、ナントカくん」


名前までハッキリ思い出せない程度の奴ではあれど、思っていたよりもいい奴だということが分かったので少しだけ対応が変わる
俺、やっぱりかなり単純らしい

まぁ、女癖は悪いんだろうけどさ。あの顔で優しいんじゃそりゃ、おモテにもなるでしょうよ、神様め


(違う、オレがあんな子に落ちるわけがない……。草薙さんの方がまだマシでしょ)


教室へ帰っていくナントカくんの頬が地味に染まっていたことなんか、吹けもしない口笛を吹いている俺に気づく由もない


(友達としてはきっと面白そうな奴だよね、ナントカくん)

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