よく聞いてな、これが事実さ

「……冷慈、ワシは言ったはずだが」

「……もう忘れたに決まってんだろ」


俺は現在進行形でゼウスのじじいに睨まれている。
まぁ理由なんか簡単であまりに俺が神を学ぼうと努力もくそもしていないから、だ。

まず、学ぶ必要が、あるのか。
神だろうと人間であろうと、行く末は同じ。己と違う者を理解しようとも、しないのだ。
同じ者同士だけが上っ面の友情で結ばれ、笑顔を振りまく。


「このままでは卒業はおろか、枷すら外れぬのだぞ」

「いい。俺は神になんかなってやんねぇ。嫌いだ、どいつもこいつも、上っ面だけの言葉なら、いらない」

「……何をどう言えど、お前には上っ面の言葉にしか、聞えぬだろう?」

「あぁ、そうだよ、だって、それが、事実だ」


自分でも不気味だと思うぐらいにゲスた笑みをして言ってしまった。
でも、これがまぎれもない、事実なのだ。惨めで醜いんだ、俺ではなく、他者全てが。

なんて考えている時点できっと俺もかなり惨めだがそこは気にしない。


「……ワシでは、意味もないか」

「は?」

「……時が過ぎれば、時になればわかる。お前は、決して一人では、ないと」


また神様が何かをおっしゃっているようだ。おめでとう
そう、俺は確かに一人で、生きては、いない。
生きていくためにはいろんな人の力がいるだろ?農家に漁師、電気製品を作ってくれるような人にガス会社の人やらなんやら。

決して、一人では、ない。
だがそれは、"生活をしていく上"でのことにすぎない。


「あっはっは……冗談だろ。そう言えば、何かが変わると思ったのかよ、おっさん」


おかしくて笑えてくる。そんなことを言っても、俺が今まで見てきたものはまぎれもなく現実なのだ。
確かに、神様なんて、愚かで俺達人間へ手なんか差し伸べてはくれない。
でも、人間は……


「いいこと、教えてさしあげるぜ、神様よ。人間ほど、黒くて、えげつなくて非情で最低で最悪な存在は、いねぇよ。あんたらが人間と愛の模範を草薙から学んでも、人間が変わらないんじゃあ、何も変わらないんじゃねぇの?かっわいそうにな」


(神から人間への一方通行の片想いは、えげつなくなってしまった今の人間へは通じない)

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