そうこれが俺なの
授業の終了を告げる鐘を聞いて、そそくさと教室から出て行く。
面倒だ。草薙に言われたから俺はここに居るけれど、仲良しごっこなんか吐き気がする。
体育館で空を切るように一人無我夢中で空手の型を1から通す。
精神鍛錬。精神鍛錬。と言い聞かせながら。
どうして他人と馴れ合わなければ生きていけないような軟弱な世の中なんだろう。
どうして、皆他人に認めてもらおうとするのだろう。同調したがるのだろう。
「……はぁっ!」
突きをしながら声をだせば、何かが晴れる気がした。ここへ来て、いわれたはずの愛や神を理解するなんてことは到底出来るわけもなく、話はしても、それもストレスへと変わるのだ。
人間なんて、ひどく弱い。弱すぎる。そんなんだから、生きていけないのだ。
それに、可哀想なほど欲にまみれた汚い奴等。
俺は生まれてくる時代も何もかも間違えている気がする。としまいには自分の存在を否定にたくもなる。
それほどのことをされてきた、のだ。大げさに言うならば。
(そう簡単に、変われたら苦労しねぇな)
ポタポタと滴り落ちる目からの汗を、拭うことはしなかった。
こんなにも俺は、周りを信じていたのに、誰も、俺へ助けはくれないのだ。
そう、この学園にいる"神"という存在すらも。
あぁ、嫌だ。神様なんて、縋るだけ縋っても、何もしてくれない。
「……助けて……。壊れそうだ」
(だれか、おれ、助けて)
(違う、俺が全部守らんと、いけん。双子も、宋壬も、俺が)
(助けを求めてる場合じゃ、ない)
ごちゃごちゃと考え抜いた中学時代の感情を、今更思い出した。
そうだ、俺はこの"強い"らしい精神でいなければ。
「……そういうのはぁ、言った方がイイんじゃないのぉ?」
「!!」
「よくないよぉ、そうやって、ぜーんぶ抑え込んじゃうの、さぁ?」
どうして、ここにいたのだろう。いつもは居ないのに。
狐の面をしたおニイさんはそう言って俺を見下ろす。あぁ、そうだ、コイツも、コイツもそうだ
俺の大嫌いで信じても居ない、"神様"なのだ
なんの神かなんて、知らないし興味もないけれど。
イライラからか、体育館の窓枠が強風でカタカタを音を立てていた。
どうして人間の俺に、風神になれなんて、言ったんだゼウスのおっさんは。
「うるせぇとよ、アンタの言う事、いやあんた等の言うことなんか、信じんぜ。何が、"神様"だ」
それだけ吐き捨てて、空手着を着たまま、俺は体育館をあとにした
(……理不尽、だよねぇ。でも、僕には何も、してあげれない、んだから……)
(どうして、神様なんか、生きちょんのかね、どうせなら俺と変わっちゃってよ)
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