はい、終わり。



山の中をとりあえず目の届く範囲で、探し回る
まだいるような気配はないけど、こりゃ上のほうまで登りやがったな


「上等じゃねぇかよ……しっかり隠れてろよこんのド変態が」


山の中をズケズケと探しながら登っていく。
いない、まだいないと探し続けているうちに似たような景色ばかりでゲシュタルト崩壊を引き起こしそうだ。


(くっそ、どこだ……)


あまりに見つからないからと地味にイライラが募る
短気なのに、ただでさえ。
それと同時にあまりよろしくない思考が脳裏をよぎっては消える。

(……、散々言っといて、まさか思い出したら用なしか?)

いや、まさか。と拳をそこらの木に叩きつける。
どうやらイライラがもうそろそろ限度らしい
余裕がない。


「……、意地の張り合いか?くだんねぇ」


深呼吸をして、探す方法を切り替える。
神化とやらをして上空から見下ろす。
目が悪いのはまぁ確かだけど、空手黒帯の動体視力とコンタクトレンズの力を舐めないでいただきたい。
あと、俺の謎の直感を。


「……いた」


正確には、一瞬、何かが動いたように見えただけ。
ガッと急降下をして、目の前に仁王立ちで降り立ってやった。

案の定、おニイさんが、いたけれど。


「よくも逃げてくれたな、恵比寿のにーちゃんよぉ」

「!!……やっぱり、思い出してるんじゃん……」

「おかげさまでな。……何逃げてんだ、アンアン鳴かしといて落としといて、逃げるたぁ大したもんだろ


ドンッとおニイさんの真後ろの木を殴りつける。
壁ドンじゃありません、木ドンです。えぇ


「……これ以上、れーじたんが僕のことまで背負う必要、なんかないよ」

「いや、そんなん俺が決めるし」

「もう、放っといてよ……!!」


途端に水で出来た魚が俺を水浸しにするようにぶつかってくる。避けたりはしないけども


「いいから、その半分、俺によこせ、逃げんな吹っ飛ばすぞ」

「だって……」

「だってもくそもねぇ!よこせっつってんだろうが!そこまで器のちっせぇガキじゃねぇんだよ!」


見た目的には、器のちっさいヤンキーにしか見えないということは自分が一番知っている
そして、自分の言った、言葉でまたひとつ、大事なことを思い出した

中学時代、おニイさんにあった時、たった一回、あった時、俺は何か、何かを、約束したはずだ
懸命に思考を巻き戻す。


「−…………そうだ」


あの時、約束したんだ。



『……約束。今度は俺が、半分もらうから。ありがとう、神様』

「……れーじたん、覚えてたの……?」

「記憶の奥底でご丁寧に眠ってやがったんだよ、わかったらよこせ」


スッと狐面に手をかけようとすればいつものように避けられた
この野郎、まだ逃げるか


「思い出したんならわかるでしょ〜……コレとっちゃうと僕、歩けないんだよぉ?」

「また担くから問題なくね」

「そういう問題じゃないよぉ」


あまりに進まない会話に流石に溜まっていたイライラがブチッと脳内で音を立てた。
形勢逆転。端から見れば俺がおニイさんを押し倒しているようにしか見えない。

その衝撃で狐面がズレておニイさんの顔が露になる。
当然、あの頃と同じで、全部が逆流してくる。


「……っ!」

「……、大丈夫、もう知ってたことだから」

「れーじたん、嫌じゃない……?」

「嫌なわけねぇし。もう逃げるなよ。逃げられたら、今更俺一人で生きてけねぇんだから」

「……」


(俺の今までなんか全部どうだっていい、アンタが幸せでいれるなら)


きっとまた読まれてることを前提に、あえて、口には出さなかった。
俺の嫌ごとも全部もうそれこそ記憶の奥底にしまいこんでやる
これ以上、一人になることはないんだからわざわざ思い出す必要もない。


「……っ、遅い、よぉ……ずっと、待ってた、んだよぉ」

「んな大昔のこと、しかも俺だけどまるで別人だったときのことなんかそう簡単に思い出せるかよ」

「やっぱりれーじたんの、いけずぅ……」

「あーもう、へいへい。泣くなよ」


自分から抱きついてやった
泣きながら言われるとは。これだからこの人はネメシス(先生)とかにクソガキって言われるんだろ


「れーじたん、好きだよぉ」

「あー、うっせ、知ってらぁ」

「れーじたんは?」

「……。嫌いな奴にここまで必死になるかこの俺が」


自他ともに認める乾燥気質のこの俺が。


「言ってくれなきゃわかんないよぉ」

「……また読んどけよ」

「えー言葉で聞きたいなぁ」

「さっきまで泣いてたんじゃねぇのかよ」

「なんのことかなぁ」


まったくさ。と思いながら、こっそり耳打ちしてやる


好きですけど、何か?

「……あはは、照れ屋さんだなぁれーじたんってばぁ」

「うっせ、普段言わねぇし!言わねぇし!」

「ありがとぉ」


(素顔の笑顔で見られて、思わずクラクラした。まぁ流石に外ではヤりませんが)


「えー、僕はここでもぉ」

「俺がやだ」



(はい、こっから先、有料です)



fin.

[ 28/28 ]

[*prev] [next#]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -