自主規制空間

「あのさ、おニイさん」

「ん?なぁに〜?」

「部屋、ねぇんだろ、……俺の部屋、来る?」

「わぁ!お・さ・そ・い?」

「そんなんじゃねぇアホ」


そういえば、と思い出しておニイさんを俺の寮に呼んだ
まぁ妹とか勝手にきてはいるときもあるが、今回はどうも色々とあっていかないと断言していたのでいいだろう

俺は柊さんとグル兄に直訴して一人寮なのだ。
じゃないと息が詰まって死ぬと割りと本気で思っていた

まぁ、いいだろう、おニイさんだから

なんだかおニイさんが俺の顔を見ながら、ふ〜んとニヤニヤしている
どうせまた俺の内心でも読んでるんだろう。


はいはい。と思いながら、自分の部屋のドアを開けて、はぁ疲れたと冷蔵庫をあさる
後ろから抱き着いてきているおニイさんはこの際スルーの方向で。


「水しかねぇけど飲むか?」

「れーじたんが飲ませてくれるならぁ」

「よしわかった、いらないな」


おニイさんに捕まったまま水を飲んでいると、地味にいたるところから視線を感じる。
なんだ、突き刺さってるぞ、視線。


「なぁ、俺の気のせいか?」

「なにがぁ?」

「視線が……突き刺さってる気がする」

「うーん、気のせいでしょー、れーじたぁん」


ん?と振り向いた瞬間目の前にうまいこと目元だけを仮面で隠したおニイさんの顔が至近距離、どころではない。
これは、え、え。


「!?」

「奪っちゃったー」

「な、な……!おい!あ、あの、え、おい!」

「あっはー、もしかしてぇ、ファーストキス、だったぁ?

「……え、あ、はい、そうです」


なんだ、仮にも男同士です。待て、おかしい絵面だったんじゃ。
完全に思考がフリーズして動かない。

それをいいことにか、俺の上半身を這う手つきがおかしい、おかしいな


「……ぁああああ!?な、なんだよぉおお!!」

「イイコトしよっかなぁって思ってぇ」

「……っ、ば、やめ……!!」



耳元で言われて、思わずゾクリとする
ついでに甘噛みなんかしてくれんじゃねぇ許さん


「や、あほ、やめ……っ」


「見ましたぁ?アレが私が好きなものですぅ」

「……なるほどなぁ、見る分には楽しいなー」


「……ちょ、や、めろ……!なんかいるだろうが!!」

「れーじたんのいけずぅ」


謎の羞恥を与えられ、ぶん殴りたいのをどうにか我慢して声のするほうへツカツカと羞恥と苛立ちにまかせ歩いていけば、見たことのない二人がいた。
一人は顔だけはどっかで見た気がする。眼帯のオレンジ色の髪の、目元に泣き黒子が二つ並んでいる厨ニくさってそうな、感じの男子生徒と、どっからどう見ても、おニイさんの女子版が一人。


「……」


思わずおニイさんとその女子を見比べた
こりゃそっくりだ


「あれぇ?淡音ちゃんどうしたのぉ?」

「兄さまが、そのお方とイイコトになるかもしれないってぇ、麗菜お姉さまに伺いましてぇ」

「……妹!?」

「そうだよぉ」


どうやらおニイさんの妹のようです、どうもすみません。
喋り方までソックリですね。イラッとくるこの、感じ。

その横の男子生徒はやたらと俺の顔を見てるが、何かついてるのか俺の顔には。
少なくともお前みたいに泣き黒子もなけりゃ眼帯もねぇが


「淡音ちゃーん、俺、戻るわ」

「えー、戻っちゃうんですかぁ?」

「うーん、俺の亡き右目がうずくぜ」

「!!……是非、治療はお任せくださぁい


なんだか、途端に妹さんがゾクゾクとしたのか恍惚の表情でオレンジ厨ニを追いかけていったんだが、あれ、大丈夫なんだろうか


「……なんだ、嵐か」

「相変わらずだねぇ、淡音ちゃんもぉ」


そういえば、その淡音さんはどうやら、俺の姉と同属らしい。あまりの衝撃に、その大事なところを聞いていたが、考えるのを忘れていた。
増えたのかよ、ホモホモうるさいのが。
まぁ、明らかに俺達の姉3人よりはマシそうな人では、あるものの、如何せん、このおニイさんの妹なのだ、本当にマシなのかは、微妙である。


「……ははは、こっわ……あ?」


これはやべぇなーと引き気味に乾いた笑いをこぼしていたら、スルスルと、元々ゆるく巻いていた制服のネクタイが外されて、腰に巻いていたブレザーも落とされていた


「……なん、ですかね」

「さっきの、続きシよっかぁ?」

「っ……!?い、いやいや、何、アホを……いや、だからぁ……っ、耳、やめ……っ!」


(結局、流されるこの現状。はい、ここから先もう自主規制)

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