厳正に処分します


その日の午後、宋壬は気づいたら教室の自分の机に突っ伏しるように寝ていて、顔をあげれば雨宮の双子と樹乃が宋壬を囲むようにしてみていた


「……何?あ、おはよう」

「いや、お前朝から寝っぱなしだからさ」

「起きないからそろそろチョークでもぶつけようかと思いまして」

「彩詞!だからそんなことさせないぞ!って言ってるだろ!」


どうやら樹乃は彩詞の魔の手から宋壬を守ろうとしていたらしい。
当の本人はぼけっと外を眺めていた。


バタバタと焦ったような足音が聞こえ、ガラッと酷い音をたて、教室のドアが開いたせいで、眠気も飛んだのか若干驚いたように宋壬がそちらを向けば、ネメシスが立っていた。


「ネメシス先生、どうかされたんですか?」

「サイサイってばやっぱりいい子だー!って、そうだけど!そうだけど違う!そうじゃなくてね!グ……、接着剤センセーどこ!?センセーが頭おかしくなっちゃった!」

「「はい?」」

「……柊さんが……?」


とりあえず、その場にいた全員で問題の保健室へ向かえば、いつもとは違う神化をした柊がそこにいた。
白髪に黄色の瞳に、いつものオールバック。襟足は少し長めになっていて、半裸で両腕にはまるでストールか何かを巻くように鎖が巻かれ、それは手首にある手枷へと繋がっていた。

下は真っ白な和服のようなものが腰から巻きつけられていて、素足。
足にも同様に足枷と鎖がついているのが見える。


「え、あの、柊さん……?」

「彩詞か。……お前じゃあなぁ。面白くねぇよなー」

「はい?」

「いや、こっちの話。それにしても、何だ?全員揃って。死ぬか死なないかの境目まで俺を追い込んでくれるのか、全員で?あぁ、そらゾクゾクするな」



まるで会話ができなくなっているらしい柊は両腕を抱くようにし、恍惚の表情を浮かべている。
これじゃあピンクナースを語るグルーガンと対して変わらないような気がする。と彩詞はため息をついた


「あの、どうして、そうなってるんですか」

「……チッ、してくんねぇのか。俺のそんな話、いや、今は俺のというよりも冷慈の話になるけどなぁ」


どうやら、目的のような事態にはしてくれないということを悟ったのか、その柊ははぁぁと大げさにため息を吐きながら保健室のテーブルへとドサッと腰を下ろして、呆れたようなポーズをとる


「レイレイ……?センセー、レイレイがどうかしたの?」

「んーそうだなぁ。まぁ、こうなってるってことは、何かに痛めつけられてるのか、もしくはその逆か?」


どうやら柊の容姿は冷慈が関係しているようで、自分の容姿を眺めながら呑気そうに柊は告げた


「あぁそうだ。あいつ、あいつな……えーっとな、誰だっけな。……狐のニーちゃんな。気をつけるように言っとけよ。俺にまで伝わってくるんだからさ、冷慈の苛立ちがよ」


また、己の両腕を抱くような動作をしながら、恍惚の表情をわざとしている


「待て、何故お前とあのガキがそこまで連動している?」

「モリガンよぉ、イイトコつくなぁ。……民間伝承の方じゃよ、雷神と風神ってのは対な存在なわけだ。そんでもって中途半端なあのバカとは違って最初から雷神な俺には相方の感情に左右される何か、があんだよ。まぁ、その何かは色々とだな」


説明が面倒になったようで、途中で詳しく話すことをやめる柊へ、彩詞がひとつ質問を返す


「でも、いらっしゃったはず、ですよね?……冷慈より前、本来生きてればずっと風神だったはずの、死んだ風神様が。その人との時も、そうなっていたんですか?」

「……あー、いやぁあいつはなんねぇよ。俺より強い奴だったからな。まぁあいつの場合は妖怪と風神を両立できるだけの器がなー。ま、俺の話は俺が話題の中心のときにでも、大雷神に、聞いてくれよ」

「え?大雷神って……」


そうこうと話しているとき、保健室の戸のすぐそばから、話題の中心人物の声が、した



「なんの話してんだ?全員、揃ってさぁ」


赤い目をした、鬼のような形相でおかしそうに微笑んでいる、問題児。


(只今より、腐った世の中を作った神様を、−−シマス)

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