もう一回!もう一回!
「……の子じゃない、わ。こんなXXXX」
「僕は……XXの子だよ」
なんでなのか分からない。寝て起きたら当然朝だったけれど、妙な夢を見た。
あの狐の妙な夢。大事なところだけ何も聞えない、こんな焦らしプレイがあっただろうかなんてふざけたことを思いながら時計を見るともう完全に一限の始まった時刻だった
今日は一限はネメシス(先生)が教えるとか言っていた気がする。
そんなことを思い出しているとドアがいきなり崩れるようにあいて思わずガッと逃げるように後ろに下がれば壁に背中を激突させてしまった。痛い。
「レイレイー!!おきてー!!……あれ?起きてた!」
「な。ななななんだよ!?」
「なんだよ!じゃないよー!あんまり来ないから迎えに来たんだよー!あ、センセーもいるよー!」
「お前だけじゃ迷うだろ」
「えへへー!」
どうして俺が起きて早々こんな夫婦のような二人にあわなければいけないのか。
俺が寝坊したからですね。知ってます。
面倒だと思いながらも起きて制服に着替えれば、うんうんとネメシス(先生)が頷いている
「そうやって来てくれる時点でレイレイはいい子だねー」
「……こいつは根は馬鹿真面目だからな……。ん?お前、それ、どうした」
柊さんが指差したのは俺の首。あぁ、そうだ跡が残ったままなんだ。
どう言えばいいんだと思いながらもここは適当にごまかすことにする。
なんだか事実は言いたくない。
「……、ストレスでもう俺なんか死んでもいいかと思いまして」
「だめだよ!ダメだよレイレイ!そんなことしたら罰しちゃうからね!」
「……だ、そうだ。もうするなよ。ほらネメシス先に戻るぞ」
「はーい!じゃあちゃんと来てねー!待ってるよー!」
柊さんが気を利かせてくれたのか先に出て行く二人に適当に手だけヒラヒラと振っておいて、もういいやとゆっくり朝飯を作り出す。
味噌汁と目玉焼きとめざしを焼いて白米もこの間冷凍していたのを電子レンジにかけておく。
「……いただきます」
朝見た夢を思い出しながらゆっくり咀嚼をして食べつづける。
あの夢がなんなのかはともかく、直感であの狐のおニイさんにも何かがあることは分かっていた。
(……俺だけじゃない。わかってる。それぐらい)
辛いつらいと思ってしまうが、俺だけが辛いわけではない。
皆それぞれ自分なりの辛いことがあるのだ。
人間の醜いところはそれを"自分だけが"そう思ってしまうところ。
俺だけがこんな目に。俺だけがなんであんなことを言われなければいけないのか。実際きっと俺にやられていたことなんて、こんなに悩むほど大きいものではないのかもしれない。
(もう一回、頑張ろう)
昨日、あの人は言っていた。人間らしく楽しむといい。って。
(無理にでも笑ってれば楽しくなるもんかね)
そう思ってまたあの跡を指で辿る。
あぁやって言うんだからそれ相当の理由があったに違いない。
何も俺は知らないけど、それはあの人も同じ。
俺のことを何も知らない。
(……お互い様、か)
「……だめだ。もう、忘れよう」
(これ以上、信じようと思ってはいけないのに、跡を見るたび触るたびにもう一回。と心が叫んでいた)
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