思い出せジャポネーゼ

「……」


他の人よりも身近だったはずの日本語を、とりあえず記憶を巻き戻して探そうと試みる。

(アリガトウにサヨナラだっけな)


あんまり覚えてはいない、意味も知らないがその単語は記憶に残っていた



(……日本語とかわっかんねぇ)

完全に困り果てていると、また顔を知っているはずの人が一人、誰か褐色肌の偉そうなのを連れてきた


「……ほう、ゼウスに呼ばれたのはお前らか異端者ども


何を言われているのかわからないが、表情からなんだかバカにされた気がするのは確かだ。


なんだ、このおっさん


「感謝しろ、貴様らにも通じるようにしてやる」


何かを呟いた褐色のおっさん。そのあと、すぐに、会話がきれいに聞こえてきた


「あの……聞こえますか?」

「っ!?」

「え、あ、あの……」


咄嗟にカタナに手をかけ対立する。
俺に声をかけてきたクサナギという女子は驚いているが


「もー、ライアーダメだろー。せっかくカワイ子ちゃんが心配してくれてんのにー!ごめんなー気にしないでー。あと褐色の人よくわかんねーけどサンキュー!」

「来い。貴様らに詳しいことを話してやる」

「へーいへい!行くぜーライアーー」

「……チッ」



カタナを持ったまま、おっさんにカインとついていく。
それにしても、平和だと思いながら、外の景色を眺めつつ歩いていく


(俺らのいた場所とえらい違うな)


こんなに平和な場所ではないし、あそこは地獄絵図という言葉がきっとふさわしい。
そんな世界が俺は好きだったけど。


(ここ、面白くねぇ)



「やっと来たか、待っていたぞ人間離れしている人間よ」


「「……」」


豪華な部屋、それも俺らの知り合いの組織の客間のような、いやそれ以上の豪華で綺麗な部屋に堂々と威厳を放ちながら座る人が一人。

すべて知っていると言わんばかりのその言葉に思わずカタナに手をかけておく。


「そう警戒をするな、ワシはお前らにいい機会を与えてやろうと思い呼び寄せたのだ」

「……」

「わぉわぉ!やっぱ神様!?」

「……カイン」


バカな俺の相棒はいわゆる厨ニ病ってやつで、今も現に目を輝かせている。
呆れたようにおっさんは、自分の名をゼウスだと告げ、ここにいる柊さんたちは俺たちに会う何百年も後の転生した姿だといわれ、どうりで。と妙に納得した俺は刀から手を外した。


「それで、いい機会って、どういう意味だ」

「そう急くでない。……お前たちの、その代償のことだ」

「「!!」」


なんで、知ってるんだと言わんばかりにカインと一緒に目を見開く。
これはここにきて受けたものではないし、俺たちのいた世界でそれももう何年も昔のことで……いや確かに、俺たちの中では触れてはいけない暗黙のルール、みたいなものになってはいたが。

なぜ知られているのか、いやそれはもうこの際どうだっていい。
何せ相手は神だ。ギリシャ神話最高神ゼウス。俺はその存在を信じていいような職業柄ではないが、本当に神であるなら俺たちのあの瞬間を見られていてもおかしくはない。


「……お前たちにはここで、神と人間と、についてを学んでもらう。その間、ソレはこちらがあずかろう。なぁに、卒業資格さえ得れば返してやるさ」


そういえば俺の腰に差していた愛刀と、カインの銃が消えた。
おいおい、まじかよ。自分の身を自分で守るのが当然なのによと思っていれば、神々の箱庭はそこまで物騒ではないと言われしぶしぶ頷くしかなかった。


(これで寝込みでも襲われたらなんとでもして全員殺すぞ)

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