似合わない風景

次、起きた時には目の前に女子が1人いた


「大丈夫ですか?」


心配そうな顔で何かを話しているが、耳がイカれている俺にはその言葉すら無音
普段は読唇で何を言っているか把握することが出来るものの、どうやらここは異国の地らしく俺の知らない口の動きをしていた


「?」

「え……あの……」


言葉はわからないし、何も聞こえないが、表情から困っていることが読み取れた
これが万国共通なのかはわからないが試しに、俺に残された会話方法、手話を試みる


【俺、耳が聞こえねぇ】

「……もしかして、耳が、聞こえてない……?」


動作で、耳を指さして、手を横に降るそれを見て 、どうやら俺の耳が聞こえてないことは伝わったようなので、頷いておく
これは面倒である。非常に面倒だ。コミュケーションをとる方法がない

言葉を話せないわけではないがどうやらここは異国の地。万国共通とはいえ、英語が通じるかもわからない、不思議な世界


「……Where is place?」

「え!?」


きっと聞き取りにくかっただろう。ところどころ、発音が強かったり弱かったり、するらしい
俺も自分がどう喋っているかすら聞えないからわかりはしないが


「えっと、その……」

「?」


やっぱり伝わらなかっただろうか。と表情にこそ出る性格ではないが若干困惑しているとドアがガラリとあいて、見慣れた人物がそこに白衣を着て立っていた


「おぉ、起きたか」

「!!」

「柊先生、あの、彼……耳が……」

「あぁ、聞えてねぇのか」


その人は、俺等のいた世界では黒い存在の筆頭。
でも、今の様子だけで解釈する限り、俺の知っている存在とはまたまったくの別物のようで。


(こら、知った顔がいても、知り合いはいない。っていう解釈をしねぇといけねぇんだな……)


ややこしいな、なんて思いながらも本来なら自分が存在しているはずもないこの平和ボケした世界を俺はどうやらちゃっかり楽しもうとしているようだ

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