森の旋律と烏

森の中に迷い込んでしまったモリガンは、辺りの烏たちを頼りに、森を抜け出ようとしていた


「……それにしても、本当に左右が反転しているんだな」


困惑しながら歩いていけば、かすかに耳に聞えたのはピアノの儚げな音だった
気づけば、その音のほうへと吸い寄せられるように歩いて行ってしまっている


「……こんな森でピアノの音がするとは……」


覗いた先には、草木が巻きついたのか植物だらけのピアノを演奏している色素の薄い金髪の神が一人いた


「……君も、迷ったの?」


ピアノの音を止め、彼は優しげに微笑んで聞いた


「実はね、俺も迷ってるんだ。一緒に出口でも探してくれないかな」

「……何故私が……」

「さ、行こうか」

「お、おい!」


半ば強引にモリガンの手を引いて、その神は歩き出す
まるで、目的地がどこにあるかわかっているかのように



(普段方向音痴な神は、左右反転した世界ではマトモに歩くことができていた)



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