樹木と歳月
「うぅ……お腹がすいた……気味が悪いし……」
樹木に寄りかかるようにして、うさ耳パーカーを着た子供が、疲労でしゃがみこんでいた
その樹木の反対側では容姿端麗などこかミステリアスな雰囲気を残した人物が静かに寝ていた
「月人……?」
少女が感じたのは己の愛する人物と同じ気配
それを頼りに樹木の反対側へと歩み寄る
「……!」
「……」
綺麗な黒髪の長髪の少年は1ミリも動くことなくまるで死んでいるかのように眠っていたからか、少女はハッとした顔で少年の心拍数を確認した
「……よかった。生きてるのか……」
「……ん……?」
ゆっくり目を開けた少年はまだ寝ぼけているような目で目の前の少女を捉える
「……っ……!」
「……おはよう……」
「ひぎゃ!?お、おはよう……って、お前只者ではないな!我にこんなことを言わせるなど……!」
「……え、でも、起きたらおはようって……言うから……お腹すいた……」
(なんだ……月人よりもわからないぞこいつ)
少女が考え込んでいると急に目の前にドーナツが差し出された
「……あげる。俺まだ色々持ってるから」
「いいのか!?……くっ、そ、そうだな……我がそのようなモノを食べるなど……ありえな……」
「じゃあ俺食べるね……」
「あー!くれ!食べたい!」
「はい」
(……餌付け、してる気分だな)
(って食べ物に釣られてどうする私!!)
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