お返しを君に


「あーあーあー!もういいよな!どうなったって!」


窓ガラスが異常に音を立てて振動をしだす。妖怪と化した風神の悪戯な暴風に、命や樹乃はおびえるように隠れている


「おチビさんにはワカラナイ。ワカルワケナイ」

「そりゃこっちの台詞だよ。おニイさん」


ギリッと歯軋りの音が音がして、少年が青年の首を締め上げていた
赤い目をした青年は恍惚とそれを受け入れ、やっときた死へと喜びを見せる

あと、少し。あと少し。とお互いが思っていたときだった


「やめろよ!!」


物凄い勢いで引き剥がされ、お互いに軽くとんだ。
二人を引き裂いたのは紛れも無く、尊だった。

彼の声が、悲痛に染まって、二人の似ているようで真逆の存在の何かを、強がるための嘘と弱さ故の嘘を溶かす


「よくわかんねぇけど、そうやってお互いの私怨をぶつけりゃ解決でもすんのかよ!!アンタらは俺らを助けに来てんじゃねぇのか!助けられてんじゃねぇよこの馬鹿!!」


「「……」」


ハッとしたかのように目の色を元に戻した二人が、呆然と怒鳴りつけてきた尊を捕らえる。
後ろでは、双子や柊にネメシスの、おぉーという声に拍手の音が聞える


「おい!返事は!」

「あ、お、おう……」

「え、あ、わ、わかったぁ」

「ったく、何しに来たんだよ」

((いやぁ、来たくて来たわけじゃないけど……))


本人の意思ではないにしろ、きてしまって、助けなければならなくて、結局、助けられて。
これじゃどっちがこの事件の本質だったのか、すらわからなくなってしまった。

そんな状態でも、ゼウスと天は特に慌てることもなく、そそくさとなにやら眩しい戸の前に立っていた


「おーい、やること終わったらさっさとこっから自分の世界に帰れよー問題児ども」

「まったくだ。こうなるとは、予想外だったな」

「そうかぁ?初っ端からどいつもこいつもあぶねぇなとは思ったけどなぁ」


ビッと親指で背後にある戸を指差しながら面倒くさそうに中国神話、最高神は呟いた。
女禍はすでに帰ったのかもうその姿はない。

気怠げに神化をし、全員が帰るまで暇そうに、高みの見物をする。と愛用の錫杖を肘置きにして、ゼウスと雑談を繰り広げている。
とても最高神とは思えない、平和な会話をしながら。


「……おい、悪かったな」

「あれぇ?おチビさん2号機ってば急にしおらしくなっちゃってー」

「うるせぇ!あ、待てゴルァ!」

「……なんだ、アイツら」


バツが悪そうに冷慈は青年へ謝り、それをからかった青年をまた、追いかける。
違うものを憎んだ二人が交わった奇妙な悪戯の話。


(どうして、急に異世界に飛ばされたのか。真相は神のみぞ知るなんとやら)

fin.

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