マイペースに生きていく
「……君にはワカラナイ。僕の気持ちなんてさぁ」
学園長室の一角が、修羅場と化しているちょうどそのとき、マイペースにのそりと起き上がった宋壬は、自分を今まで守ってきてくれていた冷慈がじわりじわりと狐面の青年に追い詰められているのを見て、あぁ。と思いながらも違う方向へと歩き出す。
「メグさん、俺は、死んでもいいから、生きたいです」
「……アンタ、それどっちなのよ」
「うーん……死んだら仕方ない、けどそれまでは生きてます」
「……そう。それはよかったじゃない。あの子に感謝ね」
いまだに宋壬のこめかみについた、ソレは消えては無いものの、それを撫でる宋壬はどこか満足そうに微笑んだ
そして、夢から覚めた二人のところへ行き、現状を伝える。
自分はこの痣のようなもの、呪いといわれた彼女の痕と一緒に生きていく。と
「なっ……!だめだ!死んじゃうんだぞ!?」
「……それまで、楽しむから、いいの」
「しかし、それでは……」
「いいんです……。これが俺の"生きようと思う力"になるから」
ニッコリと少しだけいつもよりも明るく笑ったその顔に、もう何も言えないと樹乃は泣いて抱きついた
「っ、ずーっと、友達だからな!約束だぞ!」
「うん、そうだね……じゃあ、もしどこかであえたときに、この約束忘れてたら二人とも針1000本飲まなきゃ……」
「そ、それは古に伝わる決まりごとの……っ」
「うん、そう。古に伝わりし"指きり"っていうやつだよ……」
ニコニコとしながら小指を絡めて約束をする。
何があっても、友達だという可愛い約束。
そんな状況とはうって変わって、青年は仮面ごしに僅かに見えた目を赤くし、冷慈を捕らえていた。
一方で、それは冷慈も同じようで、いつもの水色ではなく、赤い瞳で青年を愉快そうに見ていた
「僕さぁ、カミサマ、だーいきらいなんだぁ、嘘つきさん」
「その言葉、そっくりそのまんま返すぜ、この弱虫さんが」
(強がりと弱がりの行き違う思考に手出しは許されないらしい)
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