夢の中現実の渦
見たこともない場所に宋壬は一人、立ち尽くしていた
(俺は死ぬらしいなぁ)
といつものようにボケッと凄いことを考えながら。
上手く時間を巻き戻したつもりがあの、葉っぱ一枚分は自分に降りかかったようで、こめかみにある痕から悲しい記憶だけが、流れてくるようだった
(そっか……だから、あの子は……)
ある意味、自分もあの子の何かを背負ってしまったな。と軽く微笑む
(これじゃああのときの、冷慈だなぁ)
遠く昔、中学の頃を思い出しながら、それでもいいかもしれない。とボンヤリとその見たことも無い世界を満喫するかのように深呼吸をした。
「宋壬!!」
「日白義宋壬」
「……あ、月人さん、樹乃ちゃん。こんにちは」
何故だか、現れた二人に違和感もなく、宋壬はいつも月人にしていたように樹乃にもへら〜っと慌てる様子も驚く様子もなく挨拶をする。
その宋壬の様子に二人のほうが驚いていた
「お前!もうちょっと慌てろ!私の呪い、葉っぱひとつ分ももってったくせに!」
「そうです……。君はこのままでは、危ない」
「……あー、そっか……」
わかっているのか、わかっていないのか曖昧な返事をし、宋壬はゆるっと立ち上がって樹乃の頭をなでる。
まるで、小さい子を撫でるように
「子供扱いするなー!」
「うんうん……」
「聞いてないな!?」
「うーん」
「おい!寝ようとするな!真剣な話なんだぞ!」
キャイキャイと騒ぐその声を聞いて、やさしく見守るように佇む月人を見て、自分の中に浮いていた疑問が確信へと変わる
(やっぱり、このままで、いいんだ)
なんとなくわかっていた。ここが自分の夢の中で、二人が起きない自分を心配して、自分のせいだと樹乃は思いながら、こんな自分を助けにきてくれたのだ、と。
(とりあえず、俺は……起きなきゃ……)
このままずっと寝ていたいけれど、そういうわけにもいかないらしい。
「……ありがとう。俺、起きるから、大丈夫……」
ニコニコと笑って宋壬は初めて、自分から夢の中から脱出をした
(わかったんだ、俺。有限だから一生懸命生きてるからこの子は綺麗なんだって)
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