this isnot 母性

学園長室へ全員で戻った時にもうすでに全員が集まっていて帰るのに、一番時間のかかったのは宋壬と月人、樹乃の3人だった


「あにぃ!おかえり!」

「ただいま戻りました」


戸塚兄弟の(多分)感動の再会を見届けてるとき、樹乃の横でドサッという嫌な音がした
慌てたように樹乃が確認をすれば、いつも通り寝ているように宋壬が倒れていた

宋壬のこめかみに樹乃は自分と同じ何かが刻まれているのを見つけた


「あ……さっき、の……」


身勝手にもこの男は何の理由だったか自分の呪いを一つ、時間を巻き戻して消してしまったのだ
もしかしてそれが関係しているのでは、と樹乃は更に慌てて宋壬を起こそうとする


「宋壬!宋壬!」

「戸塚樹乃、落ち着いてください」

「落ち着けるもんか!もしかしたら、私のせいで……!」


「ゴチャゴチャ泣き喚くんじゃないわよ、ドチビちゃん」


途端に聞こえた知らぬ声に慌てて月人の背後へ隠れて、様子をうかがう。
そこには見たこともないが、ただなら"神様"オーラを漂わせた女神が一人、あっけらかんとしていて神様っぽくない男が一人、ちぐはぐにたたずんでいた


「あなたは……」

「おい!アンタ誰だよ!」

「……おチビさん、知ってる〜って感じぃ?」

「あぁあああ……まじか……」

「はぁ」


月人も驚き尊は歯向かい、狐面の青年は冷慈の焦った内心を読み取り、冷慈は若干逃げ腰で、トドメに柊の溜息が響いた

ギロッとその女性は柊と冷慈をにらみつけると、二人は一瞬で表情を強張らせる。
不良と元ヤンがそうなるぐらいには、恐ろしい存在のようだ


「よーく聞きなさい。私は中国神話、女禍。このふざけた面の馬面の鹿は中国神話最高神の天よ」

「メ、メグさん……そんな言い方しなくても……」

「おーおー!そうよな彩詞!よく言った!えらいぞ〜!天様参っちゃう」

「黙りなさいよアンタは」


最高神にしては威圧感も威厳さも見当たらないその男のみぞおちに女禍は拳をクリーンヒットさせると、相変わらずの態度で立ち伏せたまま、宋壬を見たあとに、狐面の青年と冷慈と樹乃を見た



「……。宋壬は、アンタの呪いを葉っぱ一枚分、誤って引き受けちゃっただけよ。時間戻したつもりだったんでしょうけどね。いつものお間抜けが炸裂したわね」

「そ、そんな……!」

「それと、アンタ……」


女禍が見た先、狐面の青年は特に怯むこともなく、その視線を面越しに受けていた

少し、ジッと見てから彼女はつぶやいた


「……似てるんだか、似てないんだか」

「え?」

「これだから、困るのよね。長男坊は」


ザンッっと音を立てながら彼女は冷慈と狐面の青年の間、二人に当たるか当たらないかのスレスレの位置へ斧を振り下ろした


「な、ななななんだよ!あぶねぇな!母さん!」

「ほんとあぶな……え?」


磁石なんだから、それ以上近づくとお互い惨めになるわよ。と吐いた彼女の目は不動明王のように釣りあがっていた
それを横目に天はゼウスにちょっかいをかけながら傍観をしている。


「……、こっちの相手してる場合じゃなかったわね」


気が済んだと言わんばかりに彼女はその場を離れまるで何事も無かったかのように宋壬と月人、樹乃の方へと向かう。


「……おばさんがひとつ、提案をしてあげるわよ、ドチビちゃん」


(ただし、これは賭けなの。貴女が、こいつがどう動くかで全てが決まる、悲しい悲しい賭け事よ)

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